氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

2019年2月12日 過去の出来事・4

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それが彼氏のためや憧れの男子のためというのならばむしろ阻止したであろう。

 

ただ行き先が「親友のココアちゃんに」ということならば率先してお手伝いをしてあげようと奮い立った。

 

「あ、いい、いい。私ひとりでやるで」

 

お気づきのことかと思われるが、バレンタインデーに向けての手作りチョコレートである。友チョコのネーミングが定着してから何年経つのだろう?生まれて初めてのチョコレート制作となる。厳密にいえば形を変えただけのチョコレート制作になるのだが、そうだとしても初心者、それも台所仕事に慣れぬものにとってはきっと段取りにつまずくことだろう。

 

「わからんかったらお母さんに教えてもらうし」

 

それでもわからなかったらクックパッドに頼るという。経験者を差し置いて、敢えて高いリスクをとることに特別な意味があるのだろうか?憤慨しないまでも憮然としていると、

 

「結局、親父は一緒にやりたいだけなんやろ?そう言えばいいのに」

と、坊主から茶々が入った。

 

 

取って付けたような言い訳をしたものの、全く当を得ているからにそれ以上、口を開くのをためらった、バケラッタ

 

「ねぇ、お父さん。やっぱり教えて」

ところがだ、どういう風の吹き回しか手のひらを返した様に作り方、厳密に言えば形の変え方を教えてくれと言ってきた。「お母さんの言う通りにやっても上手くいかなかった」らしい。そりゃ、そうだ。クックパッドにせよネットのその他の情報にせよ、実際にやったことがある経験者の言には余程の想像力がともなったところで勝てる筈もない。ただ、嫁の名誉の為に多少付け加えるが、菓子類の創作には慣れていないとしても、普段の食事に関しては文句のつけようがない。多くはないが褒めるに値する一部分だ。

 

不思議なものだ。夏休みの工作に関しては親に丸投げしようとも微塵の抵抗感すら娘からは感じられないのに、こと今回のチョコレート制作に関してはあくまでも自身の力で制作を完遂したい様だ。強制されることに相反する力学が発動するかの様に、一度の教えであとは姉妹が力を併せ、とは言っても姉はあげる相手もいないので都合よく利用されているだけなのだが、制作が無事終了した。

 

「しまった!お父さんの分の数がなかった!いつもの様にあのお酒の奴でいい?」

 

嫁の入れ知恵だろう。毎年、娘たちからはロッテのバッカスが贈られる。

「いや、何も要らないよ。気にしなくていいよ」

 

正直、自分がディレクトしたチョコレートよりはパッカスの方がありがたいが、無理に頂くこともないだろうと一応は遠慮しておいた。

 

「だって、あげなお返しもらえんやん」

 

あ、そーゆーことね。その逞しさは大人になってもちゃんと維持しておくのだよ。

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