氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

権威と主張のゴリ押し

努めて顔を合わせない様にしていた。が、いかんせん同じ町内で同じ班。それも、玄関先にまで来られたら会わずにはいられないだろう。

嫁がいたならばまだ居留守も使えるというものだ。ただタイミング悪く、というか来ることを知ってたんじゃねぇの?というタイミングで買い物にでも出て行きやがった。本当にいざという時に限って使い物にならない。

「旦那さん、今年も頼むよ」
「頼む、って何をですか?」
内容は分かっちゃいるが一応シラを切ってみた。
「あと、『パン食い競争』か『むかで競争』のどっちか出てくれんかね」
せっかくのシラもこの人に掛かっては無駄骨だった。伊達に自治会長を名乗ってはいない。

どうやらご近所では運動バカと勘違いされている様だ。ただマラソン出場経験があるというだけで狭い世間ではアスリート扱いをされる。故に毎回この「市民運動会」には選手として駆り出されるのだが、今回ばかりはタイミングが悪い。

「ごめんなさい、出られないんです」
「何でや?あんたが出られんかったら誰がアンカーやるんや?」
そう、大会最後に行われる選手リレーにも毎回アンカーとして出場して(させられて)いる。しかしながらこのリレー。10代から始まり20代、30代と複数人が続き、最後の最後で50代がアンカーを務めるという、傍から見れば高齢者虐待とも取られかねない雑な構成となっている。とはいえ走ることはけして嫌いではないので参加することも吝かではないのだが、今回ばかりはさすがに参る。

「ごめんなさい。実は駅前でもイベントがあってそれに携わっているもんですから…」
「あー、知っとるよ。テレビ見たで。何たらかんたらの会長やっとるんやろ?」
「そうなんですよね。だからちょっと難しいかな、って…」
「あー、わかった。まーしゃーないわ。ほんならリレーの時だけ帰って来て参加するってことでええな?」
「無理」
そういった発想もたしかにありはするだろう。いや、でもあっちゃ駄目だよね、普通。

「ほんじゃ、頼むで」
と帰りかけるのを捕まえて、
「次回、次回こそは絶対に出ますので今回だけは勘弁してください!」
「ほーか、そんなら他の人探さなあかんやないか。でも、来年になったら出番はないかも知れんでな」
「はい、その時はその時でけっこうです」
時間にしてたった5分程の攻防であったが、ほぼ防戦一方な戦いだった気がする。

 

てなわけで、市民運動会もご当地イベントも本日タイムリーにて行われます。

朝から忙しい…。

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タマミヤフェ酒