氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

「どろー」✖、「とぉるぉ~」〇

午後4時。傍らに置いてあるiPhoneの着信音がけたたましく鳴る。この時刻に掛けてくるのは決まって電話魔の奴だ。iPhoneを手に取り画面をみる。そこには大きく二文字「自宅」と表示されていた。

 

「もしもし…」
「あ、お父さん?私、あづ」
「うん、わかってる」
自宅とかかれた文字からはそれしか想像が出来ない。小中学生には携帯は必要がない、そう考え与えていないからだ。要するに家電(いえでん)の番号が「自宅」と表示される。それよりも何よりも、用事も無いのにほぼ毎日のことだからだ。

 

「あのさー、帰りにさー、百均で洗濯のり買ってきてくれぇへん?」
「えっ?この間、買って帰ったじゃん」
「あれではダメなんやて」
「なんで?」
「こう、どろーっとし過ぎて使えんのやて」

 

説明しよう。次女は最近、スライム作りにハマっている。スライムといえば昨今は「ドラゴンクエスト」のモンスターだが、いや、既に昨今ではないか?まぁいい。実はその昔、緑色のプラスチック容器に入れられ玩具として売りに出されていたことがあった。それも今や手作りで出来てしまう時代となった。

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手作りスライム

 

ってゆーか、小学校や子ども会の何かしらの行事で「スライム作り」なんてことをよくやっているから正直そこまで大袈裟な話でもない。会話は続く。

 

「『クスリのアオキ』で買ってきたやつではダメやよ」
「『ゲンキー』ならいいのか?」
「じゃなくて、どろーっとしたのがダメなんやて」
「洗濯のりなんて皆どろーっとしてんじゃん」
「いや、どろー、じゃなくて、とろーじゃないとダメなんやて」
「とろー?」
「違う。とぉろーやて、とぉろー
とぉろー?」
「いや、もっと、とぉるぉ~って感じかな。いい?とぉるぉ~やよ、とぉるぉ~
「わかった、わかった。とぉるぉ~、やな?」
「いや、そうじゃなくて」
「もういいわ!」

 

要は百均で買ってこれば済む話だ。スライム作りは趣味と言い切る次女。物作りが趣味というのは予算云々を抜かせばまぁ、褒められる趣味といえるのかも知れないが、とはいえもうちょっと人の役に立つ趣味は無いものだろうか?それに大量に生産されたスライムは今後どうなるのだろうか?何か使い道があれば誰か教えて欲しい。ただただ先行きを憂う。

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これが「とぉるぉ~」…らしい