哀愁の『カレーうどん』@岐阜県大垣市「朝日屋」
大垣に用事があると必ず寄るのが「朝日屋」だ。何のことはない、見た目は普通に普通を重ねた大衆食堂なのだが、本来は手打ちうどんの店らしい。そんなことはおかまいなしに自分はいつも「カツ丼」をオーダーする。
普段、市をまたいでまでの移動はついて行くのも面倒と敬遠する坊主であったが、昨日は少しばかり理由もあり一緒に昼食をとることになった。坊主にとっては初めてとなる「朝日屋」だ。因みに娘達はもう何度も訪れているので頼むメニューも自分同様決まっている。
小さな店ながら昨今は市外のみならず県外にも名店として名を馳せ、日曜日ともなれば駐車場の空きを待つ車で行列が出来るほどとなっている。昨日も案の定、駐車場が満車状態だったので、車の中で暫し待つこととした。
ただ、駐車場が空いたからといって、すかさず席が用意されているとは限らない。車をとめた後も店先で待たされることは覚悟せねばならない。脳みそが既に秋とインプットされてしまっている9月も末だというのに、30℃を超す夏の様な暑さには、肉体よりも精神的なダメージを多くくらう様な気がするのは、大きく自分のナイーブでデリケートな性格からくるものだろう。
「4名様?少々お待ち下さいね」
スタッフが皆、愛想がよいのもこの店の特徴だ。いちど店に引っ込み戸を閉めたかと思うと、すぐさま顔を出して、
「裏の席ならご用意出来ますが…」
これには二女が喜んだ。「裏の席」というのが、以前から彼女が気になって仕方のなかった席なのだ。
「じゃ、そこでいいです」
と、通された席はどんなVIPルームかと思いきや、座敷にただ座卓が置かれただけの部屋で、まぁ、VIPっぽく個室には違いはないが、既に先客がおり相席を余儀なくされた。ただそれもこの店を深く知る上でよき経験となろう。
長女は「コロうどん」、二女は「中華そば」、そして自分は前述した通りの「カツ丼」だ。坊主が何をオーダーするか興味津々だったのだが、メニューをほぼ見ることもなく「かけうどん」などとのたまわりやがった。それではこの話がここで終わってしまう。
「お前、面白くない奴だな。もっと、こうウィットに富んだメニューを注文しろよ」
「食いもんにウイットが必要なんか?」
とは言いつつも渋々だったが「カレーうどん」を注文させることに成功した。
「俺さ、辛いもん食べると鼻水が止まらなくなるんやて」
と興味深い情報を公表しつつ食べ進めるうちに、どうにも我慢が出来なくなったのだろう。
「ティッシュ持ってねぇ?」
と訊いてきた。もちろん持ち合わせなどあるはずもない。
「あっかん、やべえ。トイレ行ってくる」
辛いものを食べると鼻水が止まらなくなる体質は遺伝なのか突発性の奇病なのかは知る由もないが、結局1杯のカレーうどんを食べる間に3回もトイレに足を運ぶこととなった。
店のスタッフにとってトイレと「カレーうどん」の往復を繰り返す坊主はどういう目で見られていたのだろう?ただ、うまい具合にネタを提供してくれたことは感謝の念に絶えない。
ついでに大垣での用事というのは「ロボフェスおおがき2019」だったのだが、IT系の坊主にとってはフェスそのものよりも開催場所である岐阜のITメッカ「ソフトピアジャパン」に興味が注がれていた様だ。所在する企業を興味深く見て回っていた。