天然に拘る仕入れ人としての誇り
例え趣味とはいえ、ランニングも二日連続となればやはり足に疲れも来る。100kmや200km走ろうともものともしない猛者には憧れるが、そこに到達するには寝る間を惜しんで時間を投ずる必要があるだろう。だが、断る。仕事から完全リタイアした時に考えることにしよう。
初めてフルマラソンに出場したとき、ゴール後に初老の男性が話かけてきた。その男性がマラソンを始めたのは定年で退職をしてからということだったが、その時のタイムが3時間30分と聞き驚いた。
「やることないから走っているだけ」
と謙遜してはいたが、何事も年齢のせいにしてはダメだということを教えられた。とはいえ、やはり時間も必要ということだ。
2勤1休というわけでもないが、2日「走った」からお次は「歩く」と、岐阜市内ではいちばん大きな神社にて行われる左義長神事に合わせしめ飾りを納めに行ってきた。
そのついでというわけではなく、という事はほぼそれが目的だったのだが、そこで営まれてるたい焼き屋で初めて「天然のたい焼き」というものを食べてみた。
ほら、あたくしのことを知る人は、あたくしが無類のあんこ好きだということをよくご存知でしょう。
「私の体はあんこでできているの。私の血も肉もあんこ」
「私の血管の中は、北海道十勝産エリモ小豆よ」
「事故で大量出血したら、輸血は丹波大納言小豆ですね」
等々、誰もが知るこの有名な言葉を残したのも誰あろう、このあたくしだ。果たしてこのたい焼きがこのあたくしのお眼鏡にかなうかどうかは食べてみてからのお楽しみ。
ってゆーか、めっちゃ待たされたし。
なにせ一尾ずつ焼くのが「天然たい焼き」の特徴ゆえ、どっかのレストランや食堂みたく名前を書いて焼きあがるのを待たねばならない。自分の前には30尾ほど注文が入っている。目の前には今更参拝客なのだろうか?表通りにまで車が長い列をなしている。そんな車列を口を開けてぼーっと眺めつつ待つこと約30分。やっとこの手に「天然たい焼き」が届けられることとなった。
いきなり頭からむしゃぶりつく。皮は極めて薄い。そしてパリッとした食感にはベビーカステラをまとった様な安物のたい焼きにはない高級感が漂う。肝心のあんこはといえば、その弾力や芳醇さ、見た目の色から自分の様なあんこソムリエには一目瞭然。
「おお、おおお、おおおお、おおおおお…」
見まごうことなく、私の血管の中にある、北海道十勝産エリモ小豆、そのものだ。
「さ、かーえろっと」
目的を果たしたらそこにはもう用事などない。片道約2km半の道のりだったはずなのに、トータルで約7kmも歩いていた。無意識のうちに身体がカロリー消費に努めたらしい。なんて賢い脳みそなんでしょ。