エレクトーンもアロンアルフアも商品名です。
「親父、アロンアルフア無ぇ?」
坊主がのそーっとやって来て出し抜けにそう言ってきた。
「無いな。アロンアルフアじゃなきゃダメなのか?」
「いや、瞬間接着剤なら何でも。あるの?」
「無いよ」
「なんじゃ、そりゃ。訊いて損した」
何に使いたいのかはわからないが、ただ聞かれるだけで相談が無かったからそのまま放置しておいた。
お次は嫁がやって来て、
「お父さん、アロンアルフアない?」
「無い。アロンアルフアじゃないとダメなのか?」
「うん、そうみたい。薬屋に売っとるよね?」
「ドラッグストアなら置いてあるぞ」
「ありがとう」
そう、言い残すとさっさと去っていった。二人して何を目論んでいるのだろう?
以上が一昨日の出来事である。
そして昨日の晩、夕餉の席において嫁と坊主の会話からその理由がやっと理解出来た。
坊主が通学に使用する自転車のヘッドライトが、アタッチメント不良で走行中に外れてしまうのだと。ただ接着剤があれば応急的に持ちこたえることが出来るらしい。
「ふぅ~ん。そのヘッドライトって高いのか?」
「いや、百均で買ったやつ」
「そんなのほぼ消耗品じゃん。また百均で買えばいいじゃん?」
「あ、そうか。それ思いつかなかったゎ。でも直したからもういい」
「直したってことは瞬間接着剤買ってきたってこと?」
「うん、おかあが買ってきてくれた」
嫁に向き直り
「因みにその接着剤って幾らだったんだ?」
と訊くも返事がない。
そこで坊主が
「おかあ、接着剤、幾らやった?」
と訊けば
「300円」
とぶっきらぼうに答えが返ってきた。
「ぶっ!ぎゃははははははははっ!!!」
堪えきれずに自分が腹を抱えてわらっていたら、
「何がそんなにおかしいんやねっ!私だって言われるまで気がつかんかったゎっ!余計なこと言いやがって!」
とキレられたのですかさずエスケープした。
よしんば瞬間接着剤が必要だとしても、それですら百均で売られている。残りの使い道がみつかれば良いのだが…。因みに彼女は瞬間接着剤=アロンアルファだと思っている。
で、関係はないが本日よりオープンする「麒麟がくる」大河ドラマ館。戦国時代を語る上では何かと舞台になる岐阜県。この機会に是非、遊びに来てちょうだい。