氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

新しい家族のかたち?

娘達の要望に根負けしてとうとう犬を飼うことになった。ひとり一匹ずつ、計二匹が我が家の家族に加わった。娘達も大喜びだ。さっそく名前をつけようということになった
「お父さん、名前なにがいい?」
「いや、お父さんじゃなくて、自分でつけたら?だって自分で面倒みるんだろ?」
「えー、でもわからん。思い浮かばん」
「じゃ、好きなものを名前にしたら?」
要するに自分が娘達の名づけ(あんこ、あずき)にとった手法だ。

暫くすると、犬を小脇にかかえパタパタとやってきた。
「名前決まったよ」
「そう?なんて名前?」
「うんとね、これが『麩菓子』で、こっちが『貞子』」
「なんじゃ、そりゃ」
「だって好きなものを名前にすればいいって言ったやん」
「ま、確かに言ったは言ったけど…」
『麩菓子』は以前から妹の方が好きだと言っていたからまだわかる。しかし『貞子』とは…。一応、名付け親の長女に訊いてみた、が無視された。反抗期真っ盛りだ。

麩菓子に貞子。末永く可愛がられることを願い、はしたのだが、翌日には廊下のダンボールの中にまるで捨て犬が如く放置されていた。よくある話、「散歩も連れて行くしご飯もあげるから。ねぇ、だからお願い」と欲しがるだけ欲しがって、結局面倒をみるのは親である自分なのだ。

仕方ない。それも親の仕事と割り切ってあとは引き受けることにした。幸いにして二匹とも大人しく、映画が好きな様で食い入るように画面を注視している。実に愛らしい。

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麩菓子 貞子