氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

めでたさは理不尽を凌駕する?

 

f:id:Croquis009:20190919044001j:plain


握る拳に闘志がみなぎる。合気道を始めて苦節5ヶ月。次女がやっと八級を頂くことが出来た。

「八級?九級じゃないのか?だって十級からだろ?」
初めての審査だ。とならばいきなり八級はおかしかろう。

「う~ん、わからんけど、多分もう小六だからじゃない?」
生徒の中には小学生に上がる前の、言い方は悪いがまともに言葉すら通じない様な子ども達もいる。確かに技術よりも身体的なレベルから考えるにその子達を追い越すのには5ヶ月も必要ないだろう。恐らくそういった配慮があったのかと思う。

「しかし写真を撮ってくれはいいけれど、合気道に握りこぶしっておかしくね?」
「いいんやて。だってパーだと強そうに見えんやん」
強そうにみえんやん、ってまだ八級やん。いうほど強くないだろうよ。

「ま、確かにお前だとまるで『パーデンネン』みたいやもんな」
「なにそれ?」
「いや、いい」

古えの独り言はひとりの時に楽しもう。

「ところでさ、これお願いしま~す」
とひと切れの紙を渡された。みれば『検定料3,000円』と書かれてある。
「あ、あとこれもね」
加えて『月謝』と書かれた茶封筒も。

いや、勘違いしないで欲しい。子への投資が惜しくてここに記すわけではない。むしろ子ががんばる姿は自分にとっても仕事への糧となり活力にと間違いなくなっているわけだ。ただ…ただ、である。

「あのさ、『公文だったらお父さんが払う』って言ったのに、結局お母さんが『そろばんにしや、私が払うで』って言ったからそろばんにしたよな?」
「うん」
「でもお父さんが払ってるよな?」
「うん」
「で、合気道の時は『私が払うから送り迎えはお父さんにお願いしてね』って言ってたよな?」
「うん」

「で、ちゃんと送り迎えしてるよな?」
「うん」
「何かおかしくないですか?」
「そう?」
「『そう?』じゃねぇだろやい!」
「だって、お金のことはお父さんの方が頼み易いもん」

正直、普段、特に外出先では障がいのある姉の面倒は次女に任せることが多く凄く助かっている。トイレの時など特にそうだ。さすがに女子トイレにまで入るのは例え許されたとしても若干の抵抗感がある。若干かよ!まぁいい。それが足かせとなることが親としては一番に心苦しいことと感じているので、そのことにストレスを患うことなくのびのびと出来る環境を与えてあげるのにそれしきの投資は全く惜しくはないと考えている。ただ…ただ、である。

次女のことはともかくとして、それを見越した様にほくそ笑んでいる奴が他にいるとするならば、調子よく利用されている様な気がしてそれはそれで全く腑に落ちない自分がいる。