氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

ランチャーでパッカーなスクランブルエッガー

「これあげる」

 

ほかならぬ子ども達の母親からだ。安定の消費期限切れに逆に安心感さえ覚えてしまう。見ての通り「ランチパック」だ。「ランチパック」そのものはそんじょそこらで手に入るものだけに珍しくもなんともない。

 

実は自前で買うこともよくある。理由は食べるのにさほど時間を要しないことと、携帯に便利だからだ。もう少し詳しく説明するならば、何十キロという距離を走るとき、若しくは何時間も山の中を駆け巡るときなどに簡易食料としてリュックの中に入れておけるからだ。

 

今までも様々なものを突っ込んでトライもしてみたが、多くは上下左右にゆられるうち型くずれし、酷いものになれば原型をとどめない程に変形し、食料という概念から遠ざかってしまったものもある。ただこの「ランチパック」には今のところまだ裏切られていない。

 

買うのはいつも「たまご」だ。「たまご」以外、買ったことはない。特別「たまご」が好きというわけでもないが、何故かなんとなく「たまご」なのである。けして冒険心がないわけではないが、そう、いってみればトレーニングに於けるジンクスなのだ、とたった今思いついた。深くは追求しないでくれたまへ。

 

さて、この「ランチパック」だが、種類が沢山あることは知られている。消費期限切れだが、辛うじてこの商品を光らせるものがあるとするならば「新発売」の三文字だろう。それに「たまご」しか買わないジャパニーズな自分に当てつけるかのように横文字で「スクランブルエッグ」と書かれている。

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スクランブルエッグ

 

「ほほう、この俺様に挑戦状を叩きつけるとは猪口才なランチパックめ」

いつ何どき、誰の挑戦でも受けることを信条としている自分としては相手人にとって不足はない。精一杯のチカラでおもむろに、然しながら丁寧に封を切ると先ずは「たまご」、いや、「スクランブルエッグ」部分を確かめねばならぬ。

 

「ほら、よぉ~く見せてこらん♡」

 

黄色だ。洋の東西を問わず出自が同じことがこのことで伝わったかと思う。

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黄色♡

 

「さて、それでは味見をさせていただこうか♡」

 

パクリッ!うむ、むにゅむにゅむにゅ。う、美味い…、美味いじゃないかっ!

 

正直、中身が玉子というだけで美味い予感はしていたけどね。まぁ、予想を超えてはるかに美味いというわけではないものの、そうそう不味いと言われるものはないのだろう。これを機会に「たまご」以外も色々と試してみたいという気になったのは確かだ。よし、明日からは好き嫌いせずに果敢に挑戦してみることにしよう。さすらいのランチパッカーの誕生の秘話は続く。いや、続かん。

 

くどいようだけど「たまご」が特別好きというわけではないから。

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