氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

24時間戦えますか?

午前3時前に起床して出勤。そして日中の業務を済ませ、夜は現場に出向。22時に退店し帰宅準備にかかる。車を走らせ途中、比較的近所にある24時間営業の「西友」に寄り、既に「半額」の値がついている諸々の惣菜等を部色。結果198円の「助六」を購入(実際はその半値)。自宅に着いたのは23時を少しまわったところだった。

 

「以上が今日の奴の足取りです、ボス」

「よし、山さん、引き続き張り込んでくれ」

「了解しました、ボス」

 

風呂場の電気が点いた。どうやら風呂に入ろうとしているみたいだ。最近、エコキュートに変えたばかりだ。ガス代を気にせずにお湯を思う存分に使うことが出来る。おや、何やら悲鳴に近い声が聞こえるぞ。

 

「お湯、ねぇじゃん!」

どうやら帰りの遅い主人に業を煮やしてか、風呂の湯を落としてしまっていたらしい。風呂でゆったり出来ることだけを楽しみにしていたのにその思いを根こそぎ持って行かれてしまった様だ。

 

仕方がないからシャワーで我慢する。現場に蔓延する油やタバコの臭いを身にまとったままにしておくわけにはいかない。あんな所やこんな所まで念入りにブラッシュアップする。

 

時計の針は既に翌日へ向かいカウントダウン体制に入っていた。坊主の部屋からは恐らく同級生とのやりとりだろう、無料通話アプリを使っての会話が聞こえる。たまに馬鹿みたいな笑い声が聞こえては来るが、馬鹿だから仕方ないと諦める。

 

時刻は既に翌日にもつれ込んでしまった。とはいえ、つい先ほどまで心拍数を上げながら仕事をしていたのに、直ぐに寝ろと言われても彼は「のび太」の様にはいかない。

 

ここからはオフレコでお届けする。

プシュッと缶を開けるとゴクゴクとそののどごしを楽しむ。缶の中身は内緒だ。だが、ここでやっと生きた心地を味わうことが出来たらしい。そして眠りへの準備を始める。起床時刻は前日に同じく午前3時前。

 

気が付くとiPhoneのアラームが鳴っていた。すかさず身体を起こし服に着替える。身体はまだ前日の疲れを宿しまるで泥の様に重い。坊主の部屋からは相変わらず話し声と馬鹿笑いが聞こえてくるが、再三言うように馬鹿だから仕方がない。

 

人手不足で現場に駆り出されることは今までも多々あった。ただ、人が余っているのに現場に出なければならない不合理な様(さま)は全て「元気ハツラツ!コロナミンC」のせいだ。

 

学生も休みに入り稼ぎ時の3月だというのに、アルバイトには無理やり休みをお願いしている。人件費を含めた支払いに「待った」はない。まだまだ先の見えない状況の中、アメリカでは国家非常事態宣言がされた。従姉妹が在住するスペインに於いても非常事態が宣言され、バルセロナを擁するカタルーニャ州への出入りが出来なくなり、2週間の自宅待機が言い渡されたそうだ。飲食にとっては死活問題となる。

 

日本で発令されることが無いことを祈りつつ、

「いつもの笑顔でやってます」

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