氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

今のところ数字の見えないポイント

むしろ「敬われる」方に近い年齢になろうとも、親への義理だけはけして欠いてはならない。そういった理由も確かにありはするのだが、孫、つまり我が子を使って義父母のポイントを稼ぐに「敬老の日」というのは非常に便利でありがたい祝日だ。

如何に少額なプレゼントだろうが、それが孫の手から渡るとなればそれまでやっとのこと重力に抗っていた目尻は怒涛のごとく床に落ち、まるでたれパンダがごとく様相を示すだろう。そんな人間がいたら見てみたいものだ。

というわけで、世間の流れというか雰囲気にまんまと乗じ、純正品の娘ふたりとオプションで高校三年生の長男をともない義理のジジババの元へと行ってきた。

長年の間、自宅を兼ねた店舗で商売をやってきた義父母だが、齢80にて身体の自由が利かなくなる前に「とっとと」廃業を決め込んだ。今は同じ場所に終の住処を新築し悠々自適な生活を送っている。

目尻が床に落ちたところが見たいのならば手ぶらでは行けぬ、ってことで、手っ取り早く菓子折りでも持っていこうかと通りすがりの「シャトレーゼ」に寄った。ショーケースの中身を物色しつつ、ふと見ると赤飯の折詰がディスプレイしてあるではないか。菓子屋のくせに「敬老の日」に便乗し赤飯までもを扱うとは…。ふふふ、したたかよのうシャトレーゼ


「赤飯なんかいらん」と次女がいう。いや、お前のために買うわけじゃないからね。「私、これがいい」と長女がビスケットの様なものを持ってきた。女どもはもはや完全に目的を見失っている。オプションの坊主はといえば店内に居はするがスマホとにらめっこをしている。面倒だからシュークリームとプリンを6つずつ購入しさっさと店を出た

義父母宅では義父と世間話に興じつつ、お茶をご馳走になり、さてそろそろ帰宅しようかと腰を上げる。と、先ほど買ったシュークリームとプリンを「持って帰れ」という義母と「要らない」という次女の間で押し問答が繰り広げられていた。

「いいから、いいから。お祖父ちゃんと私の分はちゃんと貰ったで後は皆で食べや」
「だから、いらんて。持って帰るんやったらわざわざお金使ったの馬鹿みたいやん!」
けっきょくは次女が根負けして持って帰ることになったのだが、あのね、お金使ったのはお父さんだから。

まんまと手柄を横取りされたが、義父母が喜んでくれたならばまぁいい。
「今度はお母さんも連れてこやぁね」
「うん、お父さんがいない時にするゎ」
去り際の会話が我が家には実にしっくりと来る。
 
 
 
 

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次女のチェケラ