氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

怖い酒蔵さん

各務原市にある酒造会社の蔵主が、建築中の現場を見学に来るという。ほら、以前、日本酒を取り扱うならばうちの酒だけを置け、他の酒蔵の酒は取り扱うな。それが嫌ならばうちの酒は分けねぇぞ。と脅しのよう、いやもはや脅しだろ。そう脅してきた酒蔵だ。


「3時半に行くから」

いや、此方にも都合ってものがあるから勝手に決められても…。


「手土産を持っていくから」

もう、相手に合わせるしか無さそうだ。


3時20分に現場で待ち構えていると、珍しく時間ぴったりに現れた。

「あぁ、どうも」


その日はちょうど日程が悪く、目の前で電気工事が行われていた。二ヶ月も待たされた動力の引込み工事だ。それゆえ駐車場が使えない。


「車どうすればいいんだよ」

「じゃ、取り敢えずスーパーの駐車場を使って下さい」

勿論、無許可だ。後で何か買っておこう。


車を止めトランクを開けると両手に木製の清酒コンテナーを抱え現れ、

「ほい、手土産」

と渡された。

「これはうちの蔵に残された最後の木製コンテナーだからな」

要するに、これは実にレア物であるということを強調したいのだろうか?

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「手土産ってことは…、協賛品?」

ビール会社にはありがちだが、その会社の商品をメインで取り扱う約束をするとショーケースやらビールサーバーやらが無料で貸与される。または販売協力金などが支給されるケースもある。古い飲食店の看板などに、日本酒の銘柄が書いてあったりすることがあるが、あれは商品名を記す代わりに看板が協賛されているケースだ。看板とはいえ何十万から何百万もするものがあるから馬鹿にならない。


「ほら、ここに取れかけてるけど『小町』って見えるだろ?宣伝にもなっていいじゃん」

「いや、これ宣伝ってお宅の蔵の宣伝でしょ?」

「なんか文句があるのか?」

「いえ、何もありません」


「あ、あと日本酒持ってきたから。33,660円ね。払って」

「ありがとうございます」


そう、この代金を払う為にローソンまで歩いてお金を下ろしに行ったのだ。


「じゃ、帰るから」

「店の中は見ていかないんですか?」

「どうせまだ出来てねぇんだろ?」

「はい、まだ中途半端です」

「じゃ、出来てから言えよ」


ということで用事が済んだらとっとと帰っていった。

 

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