父、美容院に娘を引率す
以前にも言ったが何度でも言おう。男親である自分に「美容院に連れていけ」と娘が言うのはなんか違うと思う。中学・高校にでもなれば親に頼らず自分達で勝手に行けよ、という自身が辿ってきた昭和の正論は別にして、そもそも行き先は美容院なんだから、依頼すべきは女親でしょ、普通。とはいえ、既に慣例となってしまったことを今更うだうだ言っても詮無いこと。ならば言うなよってお話ですが。
結局、たかりやすい財布という存在なんだろう。ならば少しでも安くあげようと行き先はいつもの格安美容院「プラージュ」だ。ただ、いつもはクソ田舎の店を利用していたのだが、今回は比較的街中にある「MEGAドン・キホーテUNY岐阜店」に併設された「美容プラージュMEGAドン・キホーテUNY岐阜店」だ。電話が掛かってきた時に店名を伝えるのが大変そうだね。
着いたのは午前10時30分。店内にはスタッフに客を交えフロアスペースを埋め尽くすくらいに多くの人でグツグツ状態だった。スタッフだけでも10名以上いる。客席には待ち客も含め30名はいただろうか。
「１～２時間、お待ち頂くことになりますが宜しいですか？」
と店長らしき男性に声をかけられる。自分の一存では決められない。
「う～ん、うん、いいよ。どうしても今日中に切りたいから」
結局、次女の一存に長女もうなずくしか無くそのまま待つことになった。ただ、彼女達は客という立場だから椅子を占拠したところで文句をたれる者はいないだろうが、自分はあくまでも引率者だ。謙虚にも立ったまま順番が来るのを待っていたのだが、そのうち自分の存在がスタッフにとって邪魔だという事に気がついた。狭い店内に自分がいることによってスタッフが遠回りを強いられている。明らかに導線を乱しちゃってるじゃんね。
「オレな、仕事の邪魔をしているみたいだから、『ドンキホーテ』で時間を潰してくるよ」
と娘たちを残し一時、美容院を退去する。１～２時間、待たされるということは、最低でも１時間は待たされることだろう。ならば１時間きっちりと時間を潰して戻れば良い。
店内には「ダイソー」もある。以前から狙っていたiPhone用のライトニングケーブルを物色する。ほら、新しいiPhoneを使っている人はわかると思うけど、以前はUSB-Aだったのが、今はUSB-Cになっちゃったじゃない？車で使っているソケットはUSB-Aなんだよね。ケーブルに不具合が生じて来たからUSB-Aの新しい物を購入しようと思って色々探したんだけど、長さが間に合わなかったり色が気に入らなかったりしてなかなかお眼鏡に適うものが見つからなかったんだよ。
ところがあった、あった、ありました。価格は800円と「ダイソー」にしては少々、お高い価格設定だったが、ソフトバンクユーザー限定のスーパーPayPayクーポンを使えば最大50％が返ってくる。ま、「ダイソー」に関しては上限が300円なので実質500円で購入出来たわけだ。
なんやかんやと時間を潰し、美容院に戻ってくると次女がなにやら怒っている。
「遅い！私らの番、次なんやでね！私はよくてもあん子の髪型の説明できるのはお父さんだけなんやで。もっと早く戻ってきてよ」
「あ～、悪い悪い。でも大丈夫。外からちゃんと見てたから」
と、その場しのぎの嘘を冗談のつもりで放つ。
「え、そうなの？なんや」
おい、おい、信用するのかよ。単に偶然が呼び寄せた奇跡なだけだったが、波風が立たぬならばそーっとしておこうと思った。20分後にはこけしが二体、完成。
