夫婦でベロベロ
カウンターとはいえ申し訳程度しか席数のないカウンターに、わざわざ2名で予約を入れてくれた名も知らぬ客があった。まだ、テーブル席にそこそこ余裕があるにも関わらずだ。
説明しよう。電話で予約を直接入れるのならば空席情報を把握出来ないが為、こちらの意のままに席誘導させられるのだが、某大手のグルメサイトから予約を入れられると指定されるがまま席の予約が出来てしまうという、悪質なシステムによりお客側のなすがままにされてしまうのだ。ま、それが気に入らなきゃそのシステムの利用をやめるか、お客「様」に電話をして「その席は先約がありまして…」と断れば済む話なのだが、そんな事を繰り返していたらそれこそ悪評が立ちかねない。仕方がないので週末とて4名席だろうが2名でご利用頂いている。
にも関わらず、4名蓆を指定せずわざわざ2名でカウンターを予約する例は当店にとって極めて稀有なケースなのだ。ところがご来店を受けその理由がはっきりとわかった。以前にもご利用頂いたことがある、単にカウンター好きなカップルなだけだった(爆)
ただ、そこでこの話は終わりではない。このカップル、夫婦なのだが、二人とも実に大酒飲みなのだ。それにペースが恐ろしく早い。つまりテーブルでわざわざスタッフを呼びつけてオーダーをする手間をはぶくにカウンターは実に合理的というわけだ。ダイレクトにオーダーすれば済むし、その分、注文したものが手元に届くのが早い。
オマケに彼らは目の前で調理されているものを見るや片っ端からオーダーする。目で見る楽しさをも一緒に味わってしまおうという、貪欲ではあるが店側にとってみれば実に美味しいお客であり言ってみればカモでもある。
余談だが、カモはこれからの季節に重宝される食材だが、その美味しさに比して簡単に捕まえれれる鳥としても知られている。鉄砲要らずとも。これが「カモる」の語源になったそうだ。
彼らは果実酒しか飲まない。最初から最後まで度数7%の果実酒をひたすら飲む。在庫を心配しながら提供するも、どうしても底をついてしまうと違う果実酒に手を染める。りんご酒が底を付くとお次はみかん酒といった具合だ。まるで蝗害にでもあった畑な気分だ。
終盤にはベロベロになりながらも実に陽気な酒で仲睦まじいのも良くわかる。
「クリスマスケーキをお願いして買ってきてくれたのはいいんですけどね、これ見てくださいよ~」
とスマホに残る写真を見せてくれた。
「もう、ぐっちゃぐちゃ。笑えるでしょー(爆)」
「いや、普通に持って返ってきたんですけどね」
「ベロベロに酔っ払っとったやん(爆)」
結果、果実酒を2人で2升5合。りんご酒とみかん酒を飲み干して帰っていった。実に爽快な夫婦だった。