氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

ま、物理的には無理っちゃ無理だけど、心情的に空気を読めよ。

お陰様で毎日、嫌になるほど忙しく過ごさせて頂いているのだが、いや、とうの昔から嫌になるほど忙しく過ごさせて頂いているのだが、現場に出たら出たで更に忙しさが重なり肉体的にキューキューと悲鳴を上げ始めている。本当にキューキューと鳴くの?気になるのであればほら、ベンチプレスで鍛えたこの胸に耳を当ててごらん。両の手でギュッとしてあげゆ♡

 

但しおっさんは不可。

 

おっさんと言えば、世の中には中々にして御し難いおっさんもいらっしゃる。おっさんの傾向と言ってしまっては語弊があるのだが、一昨日のおっさんが正しくそんなおっさんだった。いわば「空気が読めない」人だ。

 

来客とオーダーが重なり中と外と両方を行ったり来たりとバタバタしていると、頭から首から全身を防寒着で包んだおっさんがいらっしゃった。今回で2度めだ。岐阜県民割「ほっと一息、ぎふの旅」を利用しホテル泊で飲みに来ている。

 

くどい様だが説明しよう。この「岐阜県民割」というのは岐阜県民であれば期間中、ホテルが半額で利用出来るという画期的な企画だ。よってこの機会にと岐阜市民であるにも関わらずわざわざ岐阜市内のホテルを利用する、まさに身を挺して経済を活性化させようという素晴らしい方々が続出していると聞く。因みにこのおっさんは関ヶ原からの来客だ。

 

席に座るや否や、一方的に話しかけてくる。此方が何をしていようがお構いなしだ。目の前には注文表が立ち並ぶ。あちらで呼ばれれば「はーい」と駆けつけオーダーを聞き、此方でビールの注文を受ければジョッキに注ぐ。ま、言ってみれば人がいないから致し方ないってことなんだけど、とにかくオシボリは出す、ドリンクは作る、作った料理は自ら運ぶと八面六臂なわけだ。オマケに頚椎症性神経根症で左半身に激痛を抱えている。

 

言い方は悪いが、最初の内は「ふんふん」と話を聞いていたのだが、その内、相手をしていられず半ば無視に転じた。でないと料理が遅延して他のお客さんに迷惑を掛けちゃうんだもん。

 

それに気がついたか気づかずか、おっさんはおっさんで手立てを考えた。そして実行に移す。カウンターに座り、

「すみません」

と自分を呼ぶ。そしてメニューの焼酎の欄にある「晴耕雨読」を指差し、

「これ、なんて読む?」

 

「いや、『なんて読む?』って横にルビがふってあるでしょ?『せいこううどく』ですよ」

「正解!で、どういう意味か知ってる?」

「まんまやないですか。晴れの日は耕す、雨の日は読書に時間を費やす」

「正解!」

「で、どうするんですか?ご注文されるんですか?」

「いや、焼酎はやめとく」

「飲まんのかーい!」

 

暫くしてまた

「すみません」

「はい」

「この、長良川って酒、犬山で小町酒造の社長から直接、買ったことがあるんだけど、あの人、展示販売しながら自分でグイグイ飲んどったぞ。酔っ払って商売しとっちゃダメだな」

「いえ、飲みながらなんてのは自分らも普通にありますんで特に気になることでもありませんけど」

「ところで長良川の源流に行ったことある?」

「はい、ありますが、で?長良川をお出ししていいんですか?」

「いや、日本酒を飲むと眠くなるからやめとくゎ」

「やめとくんかーい!」

 

その後、日本酒を飲んだわけでもないのにカウンターでこっくりこっくりと舟を漕ぎだした。お陰でやっと平穏無事に仕事に専念出来る環境が整うことになったわけだ。

 

そのまま1時間ほど放置プレイを楽しみ、閉店も間近になったので起こしてあげた。

「1時間以上、寝てましたよ」

「ということは、起きてた時間の方が短かったってわけ?」

「まぁ、そうなりますね」

 

次回、お越しの際はいきなり寝てくれてもかまいませんよ、と嫌味を添えてお見送りさせて頂いた。週末に来訪のご予約を頂いたので、それまでに何らかの作戦を立てねばならない。

 

で、関係ないけどこの天然生本マグロ、只今550円で食べられます。

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