氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

さすらいのツーブロッカー(ガスター10はH2ブロッカー)

「オレ、どんな髪型が似合うやろ?」

と食卓で坊主が訊いて来た。間髪入れず嫁が答える。あーだこーだとワチャワチャ言って来たが、それには一切耳を傾ける気も気配もない。そして自分の弁を待つ。

 

「あんた、私がアドバイスしとるのになんで無視するの!」

「あ”?いつも面白がるだけで真剣に応えんで」

恐らく真剣に応えてはいるとは思うのだが、ガーッとかザーッとか話の内容に擬音が多過ぎて理解出来ないのだろう。余程の想像力を有している超能力者でもない限り同感だ。

 

この夏、小中高と同じ学校だった幼なじみと久しぶりに会ったという。仮にSとしよう。彼は実家を出て会社の寮住まいと聞く。つまりS がお盆に帰省をした時の出来事だ。

 

「Sさ、なんか似合わんパーマ掛けてオマケに彼女まで出来たらしい」

とその時に聞かされた。

「彼女まで出来たってのならば、お前が見慣れてないだけであながち似合わないパーマでないんじゃね?で、自慢でもされたんか?」

「まぁ、そういう事」

「お前も何か自慢してやったらいいじゃん」

「したよ。なんか残業が多くて月に40時間以上もあるんやって」

自分にとっては40時間など残業のうちにも入らないレベルだがSにとっては辛いことなのだろう。

「でさ、『お前んとこは月に何時間くらい?』って聞かれたんで、『就職してから今の今まで0時間』って自慢しておいた」

 

ん~~~、「彼女出来た」vs「残業0時間」かぁ~~~。

 

「それ、お前に彼女がいたら圧倒的にお前の勝ちだとは思うけど、なんかこの勝負、お前が負けた気がする」

 

そして時を数日隔て髪型の話になった。恐らく先日の話が引き金になったのだろう。

「思い切ってツーブロックにでもして来たらどうや?」

「似合わんと思う」

「似合わんかどうかはやってみんとわからんやろ」

よし、ならばと、

「じゃ、オレがやってくるからそれを見て決めろ」

 

どうせ目下休業中だ。失敗しても店の再開までに修正が利くだろう。それにプータローとしては身体を張って威厳を保つことくらいしか考えつかない。

 

言葉に出したら即、行動。行き先はいつもの床屋だ。

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「あのね、『マスカレード・ホテル』のキムタクわかる?あれみたいな感じでツーブロックにしてくれる?」

最初に応対してくれた女性スタッフに開口一番、そう伝える。

「あ、はい、わかりますけど…。店長と相談してきます」

 

なんで相談なんだよ。ストレートに伝えるだけでいいじゃん。店長が他のお客のカットをやっと終え此方へやって来たついでに改めて同じことを伝える。

 

「あのさ、『マスカレード・ホテル』のキムタク…」

ツーブロックなら出来ます」

最後まで話を聞けよ。

 

ただ、あぁした方がよい、こうした方が良いというアドバイスくれたので、それを大人しく聞き比較的ライトなツーブロックで抑えておいた。言われなければそれとわからない程度だが、一応ツーブロックツーブロックだ。顎髭との一体感を意識し今回はローレベリーにモミアゲだけを刈り上げにしておいたとのこと。

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ところが言うに及ばず坊主にも好評で、これならば自分もやってみたいだと。体を張った甲斐があったというものだ。具体的には体ではなく髪型だが。

 

然しながらキムタクにしてくれと言ったのに、これでは「マスカレード・ホテル」は「マスカレード・ホテル」でも渡部篤郎じゃないか。不本意ながら今回だけは許してやることにしよう。

 

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