髪も眉毛もある内に遊べ
都立高校では「事件や事故に巻き込まれる可能性がある」ことにより校則に禁止事項として記されていたが、岐阜市のおじさんにとってはきっと安全な髪型であろうツーブロックにまたしてもして来た。それも今回はかなり鋭角にえぐりこむように打つべし、じゃなくて前額髪際隅部に届く勢いでバリカンを入れた。なに?前額髪際隅部がわからない?ググれ。因みに読み方は「ぜんがくはっさいぐうぶ」なので念の為。
バリカン跡を手で触ると気持ちがいい。ほら、君も触ってごらん。正真正銘ウールだよ。
全国理容衛生同業組合連合会に属していない店なので、基本、正月を除き年中無休だ。いつも髪をカットしてくれる店長に話を聞いた。
「8時半開店から早くても7時、遅ければ8時に終わります。正月休みと週一しか休みはありません」
だそうだ。完全に労基から逸脱している業界だな。飲食業界もそれにほぼ等しいけど。
「岐阜に理容師学校ってあるの?」
「いえ、岐阜には無いですね。名古屋に確か3校ほどあったかと思います」
「理容師になりたい、って入校する若者っているのかな?」
「いないでしょうね。美容師はともかく。ほとんどは実家が床屋を営んでいるといったケースでしょう」
代を継いでくれる息子がいるならばまだ良いが、近所の床屋は一人息子にその気がないみたいなので2代続いた床屋も彼の代で終わるのだろう。
顔剃りは鳥居みゆきに似たいつもの彼女だ。
「この間ね、男前な女性スタッフに眉をととのえてもらったのよ。ほら、老眼で鏡を見ても自分の眉毛がわかんなくて。歳をとると1本2本と長い眉毛が生えてきたりするじゃない?」
「誰ですか、その『男前の女性』って」
う~ん、わかって貰えなかったか。仕方がない。あまり言いたくなかったが、
「ほら、ちょっと太めの人」
と説明すると直ぐにわかってもらえた。一応、デリカシーってもんがオレにもあるんだよ。
「あの人の眉毛もシャキーンとしてるよね。シャキーンとしちゃっていいの?」
「うん、シャキ-ンとしちゃって」
「シャキーンとね。了解です」
そしてこれがその後、シャキーンとなったアラカンの眉毛だ。
Tik Tokで髪型を変え眉毛を整えるだけでブサイクがイケメンになる動画を楽しみによく見ているが、此方の場合は元々がいいので尚更、拍車がかかってしまった。