氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

話くらいならばいつでも聞いてやるぞ

店舗の2階を無断で事務所に改装し、そこにPCを持ち込みあんなことや、こんなことを検索し閲覧しつつ「ぬへへへへ」と笑っていたら、

「女性のお客様がお見えです」

と階下からスタッフの呼び声が聞こえた。ちっ!せっかくイイところだったのに。女性のお客様ったって自分のところに来るのなんざ保険の外交員か投資話の営業に食材業者が関の山だ。客観的に見ても面倒くさそうに階段を降り、店の入り口に向かうとそこにはどどーん!と1人の女性とはんなりとしたもう1人の女子がいた。

 

「なんだ、お前か」

見るとそこには見慣れてはないが知っている女がいた。自分の記憶が確かならば系列店舗の店長の同級生の筈だ。横にいるはんなりとして女子は彼女の娘で、たまにアルバイトとして店の手伝いをしてもらっている。これがまた見た目だけでなく出来の良い子で非常に重宝している。永久にうちにいてもらいたいくらいだ。それも安月給で。

 

ところで一体全体なにをしに来たのだろう。せっかくのお楽しみ中にわざわざ2階から降りてきたんだ。さぞかし重要な用事でもあるのだろう。

 

実は彼女もまた料理人である。岐阜ではまぁまぁ有名なホテルで修行を積んできた、かどうかは定かではないが、取り敢えずそこに就職し、先ず最初にまんまと口車に乗り包丁のセットを買わされたらしい。先日、自分が包丁を買ったことを受け、これ幸いと包丁のことを語りに来たのだとか。そんな話を聞く為だけにオレはわざわざ呼び出されたのか?

 

「サーモンナイフの刃先の波々はサーモンをスライスする時に包丁にくっつかない様にそうなっているんですよ」

「へー」

「あと骨スキ包丁も持ってます」

「へー」

「あとこれ差し入れです」

「へー」

 

ん?差し入れ?

「へーじゃない!へーじゃない!」

中身はわからないがなにやらずっしりと重い。貰えるものだけ貰ったらあとはもう用はない。

「うんじゃ」

と踵を返し店へと戻った。

 

袋から取り出す。

「なんだこれは?」

思わず感嘆の声が口を衝いて出てしまった。

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「めっちゃ映えるじゃんね」

どうやら食べ物、それもスイーツらしい。一緒に入っていた名刺には「お菓子研究家・店主 古野さつき」とあった。店名もアルファベットで書いてあったが全く読めない。カタカタで「テト」とある。あー、あそこか。わかったぞ。駐車場もない街中に忽然と現れたお菓子屋がある。それがいつしか行列の出来るお菓子屋となりちょっとした話題にもなった。非常に興味深く行列を見ていたのだが、さすがに自分が列に並ぶのは気が引ける。

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「おいおい、いい仕事するじゃねぇか」

こういったツボを突いた差し入れをするとは見た目はともかく中々女子力高いんじゃね?

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これだけ褒めたんだ。お次は何が寄せられるかが楽しみだ。

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