氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

饅頭1個分の接客

仕事中に電話が鳴る。画面を見ると「おやつ爺い」と表示されていた。電話に出る。

 

「今、深岐阜駅にいるんだけど店にいる?」

「いるよ」

「じゃ、今から行く」

何しに来るんだ?酒は下戸の下戸だし何よりもまだ開店前だ。加えて今は新岐阜駅と呼ばず名鉄岐阜駅と呼ぶ。

 

ここらで説明しよう。「おやつ爺い」とは3時のおやつネタをSNSにアップすることを生き甲斐とし、おやつと共に生きおやつと共に死ぬと豪語する認めたくはないが自分の小中の同級生なのだ。

 

「よ、どうした?今日は」

「あぁ、これあげるゎ]

とカバンの中から紙に包装された何かを取り出した。

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「一個で悪いね」

 

見るとお菓子の様だ。

「お土産か。悪いな」

「京都のお菓子だ」

「京都?『尾張屋』と書いてあるが。名古屋じゃないのか?」

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「だから京都だって。尾張人が京都に行って始めたから『尾張屋』だ。古いんだぞ」

「古い?古いのか?賞味期限切れか?」

「賞味期限は…と。ほらここに書いてある。まだ大丈夫だ、ってそうじゃなく老舗って事だゎ」

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「まぁ、多少賞味期限が切れていようがオレは慣らされてるからな。きっと当たる事はない」

 

これが一個100円もする高級お菓子らしい。

「いや、それが値上がりしたんだゎ」

「幾らに?120円くらいか?」

「正解!」

いくら何でも値上げしすぎだろ。単位が3桁だから誤魔化されるが100個買ったら12,000円だぜ?ただ自分で買わなければ何も問題ない。

 

肝心のお味だが、味の説明の前に中身は案の定、餡子だった。

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そしてあろうことかマイフェイバリットな粒あんではなく上品なこし餡だったが前述した通り貰い物なので此処は文句を差し控える。美味かったからまぁ、許してあげることにしよう。味についての論評は以上だ。

 

ところで彼は何をしに自分のところにやってきたのだろう。たった一個のお菓子を渡すためだけにわざわざ会いにきたのだろうか?想像するにきっと寂しかったんだろうな。わずかでも彼の心の隙間を埋めてあげられて良かったよ。

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