岐阜のモーニングを舐めんなよ!
業界人は夜が遅い。もう閉店間近だっちゅーのにいち早く店じまいをした近隣の店主どもが一斉になだれ込んで来やがったお陰で閉める店も閉めれんっちゅーの。とはいえ、そこは貪欲にぼったくるチャンスとばかりにそつなく営業をこなしたことは言うまでもないことは言うまでもない。
となれば必至なるは午前様、頭を垂れてつくばえ、は無惨様。おまけに昨日は早朝から月イチの町内清掃が待ち受けていた。夜の街をゴミ箱化する無法者から街を守るため、正義の勇者たちがゴミ袋に火バサミを持って街の清掃活動に従事するのだ。もちろんタダでだ。もう一度いう。タダでだ。
掃除も終わり、集めに集めた90リットルの袋ふたつ分のゴミを車に詰め込み帰宅の途につく。布団に入った時間は2時間あまりだ。さて、取り敢えずコーヒーでも煎れ、その後は幽体離脱的に自然に寝入る予定は未定でも楽しもうかと思ったところで、ふと一瞬、思い立った。どうせならば店で煎れてもらった美味しいコーヒーを飲みに行こうではないか。
そう思い立ったのは長良川に差し掛かる金華橋の真上でのことだ。たしかこの近くだった筈だ。岐阜市でも有名な過剰なモーニングサービスの店は。さっそくGoogle先生にお教えを乞い行ってみた。
「珈琲あいりす」
モーニング乞食を自称する者達ならば必ず知っている店だと思う。知らんけど。取り敢えず入ってみよう。
「頼もう」
運が悪けりゃ行列が出来る店と聞いちゃいたが、運が良かったのか客は自分ひとり、要するに自分のみだった。
これはラッキーなのか?それともコロナ不況か?時刻は午前8時55分。
心配は杞憂だった。9時の時報をよーいどんとばかりに次々と客が訪れ「あっ」と言う間に満席になってしまった。それも上から見ても下から見ても斜め45度から見てもどこをどうとってもご老人ばかり。皆さん、お元気なのか耳が遠いからなのかマスクもせずに大声で会話を楽しんでおられた。
「今日は21日やでな、鏡島弘法に行かなならんのやゎ」
説明しよう。岐阜市の鏡島にある弘法大師を祀った寺では、毎月21日になると「弘法さんの縁日」として賑わうのだ。いわれや由来は知らん。なんでも流行りの「金の御朱印」が頂けるとかで、県の内外から多く人が集まるらしい。このご時世に実に果敢なことだ。
「今日は21日やでな、鏡島弘法に行かなならんのやゎ」
うん、それさっきも言ってたよね。聞いたよ。誰かが返事をしてくれないと同じ話がエンドレスリピートする。
「こんなにモーニング付いとったら朝ごはん要らんゎね」
おたく、何しに来た?朝ごはんを食べに来たんじゃねぇのかい?
「わし、もうずーっと朝ごはんは食べんことにしとるんやわ」
食べんことにしとるんなら、そもそも朝ごはん要らんもクソもねえだろやーい。で、朝ごはんを食べんことにしとるんやけど、モーニングは食べるんかーい。
「今日は21日やでな、鏡島弘法に行かなならんのやゎ」
はいはい、わかりましたよ。鏡島弘法ですね。お気をつけていってらっしゃい、とゆーか誰か返事したれよ!
実に楽しいモーニングタイムでございました。
で、肝心のモーニングサービスはコーヒー価格550円でご覧の通り。
予想以上に高い壁だったが、完食出来たことを全力で褒めてくれてもいいんだよ。