氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

岐阜県関市で百年以上続く老舗@「入船(いりふね)」のカツ丼

入船、出船とは元々は船に由来する言葉だが、船首が港に入る方向を向いているか出る方向を向いているかを指す。あまり広くは知られていないが、実は飲食店においても使われる言葉だ。

 

玄関先などで靴を脱いだ際にそのまま揃えることを入船、逆に外へ向けて揃えることを出船と呼ぶ。おそらく日本人は訪問先で靴を脱ぐと出船に揃えることを小さな頃からマナーとして教えられていると思う。自分もそうだ。しかし、そこが例えば飲食店や旅館で下足番がいる時には入船で揃えることがマナーとされている。出船で揃えれば勿論、お行儀の良さはアピール出来るのだが、それでは下足番の仕事を奪ってしまうことになるからだ。

 

ただ、お年寄りなど足腰が弱い人の中には何かに掴まったり床に手を付きながらでないと靴が履けない場合がある。そういった方々にとって入船のままにしておいた方が有り難く思われたりもする。要は自分がそれで良いと思える方向ならば「それでいいのだ」に突き当たる。

 

と、軽くうんちくのジャブをかましたところで、昨日、私が向かった先は岐阜県関市にあるまだ見ぬ強豪「入船」だ。

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二度目のチャレンジとなる。前回は昼の12時過ぎに伺ったにも関わらず「売り切れ」を宣告されてしまった。11時30分が開店時刻と承知していたが、ものの30分で売り切れてしまうとはモンスター級の食堂ではないか。

 

して、昨日はその「売り切れ」を考慮して開店と同時に伺うことにした。にも関わらず先客が5名程いたが、切り盛りしている女将に尋ねると「どうぞ」と小上がりの席に案内された。靴は当然、入船に脱ぐ。

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小さな店だが、明らかに見た目も老女である女将がひとりで取り仕切っている。とはいえ老いてなお矍鑠(かくしゃく)としており、言葉も明瞭で動きにもキレがある。ただどこまで行ってもワンオペなので、接客と調理の同時進行は難しく、よって料理が提供されるまではある程度の時間とそれ相応の覚悟が必要だ。

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オーダーの80%が「中華そば」と聞いていた。それほどまでに「中華そば」がこの店の売りなのだろう。


そこで自分は敢えて「カツ丼」を注文する。そこに思惑らしい思惑はない。ただ「カツ丼」が食べたかっただけだ。いいだろ?それに「カツ丼」ほどその店の個性が光る料理はないとさえ思っている。

 

で、出て来た「カツ丼」を見て「やっぱりな~」と思わされるわけだ。

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ほら、玉ねぎじゃなくて長ネギが使われている。それにカツがザクッザクッザクッと切り分けたものでなく、ヒレカツの様に大ぶりに切り分けられたものがゴロンと三つ入っていた。

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それにだし汁が染みてよい感じにしなびている。こりゃもう、たまりま船場太郎だ。

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娘たちは中華そば

 

「お客さんは初めて?どこからいらっしゃった?」

「はい、初めてです。岐阜市から来ました」

「あれ、今日のお客さんは岐阜市の人ばっかや」

どうやら、どこから来たかを尋ねるのがこの店の流儀らしい。

 

「お店は何年くらいやられているんですか?」

「まぁ、百年?私の歳が歳やでね。百年過ぎたらもう数えるのがやんなった(笑)」

 

まさか女将が百歳を過ぎているとは思えぬものの、店内の風格を見るに代が変わるも百年以上、続いている店だということは想像が出来る。

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この先、代が継がれることもどうやら無さそうなだけに今回、来ることが出来て良かったとつくづく思う。やはり「中華そば」も食べておかなくてはね。

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