ちょいワル親父 vs ちょいヨイ親父＠創業昭和８年岐阜県賀茂郡八百津町「三勝屋」
目を瞑ると昨日のことの様に思い出されるが、いったい「つむる」と「つぶる」はどちらが正しいのだろう？あ、いや、脱線した。そう、昨日のことの様に思い出されるが昨日のことでないことは明白。ただネタを温めていたわけではけしてない。単に忘れていただけだ。
先日の日曜日、ご存知の様に「モンテール」の工場直売所へ行き甘いものをしこたま買ってきたのだが、ただ買って帰るだけでは芸がないと、芸人でもないのに思ってしまうのは如何なものかと思うのだが、思ってしまったから仕方がない。ついでに八百津にまで足を延ばした。目的は昭和８年創業、今年で87歳になる大衆食堂「三勝屋（さんかつや）」だ。
以前から一度は行ってみたいと思っていたのだが、やっと念願が叶った。到着したのは閉店まで残すところあと30分の１時半だ。だが、さすが人気店とあって駐車場も店内もまだお客でごった返していた。紙に名前を書きおもてで名前を呼ばれるのを待つとした。
駐車場には黒のGT-R（R35）、それもnismoがとまっている。辺りをキョロキョロと見渡して、持ち主らしき人が近くにいないかを確認しつつ、「お父さん、恥ずかしいからやめてよ」と制止する次女を振り切り、「止めてくれるな」とばかりに車の中やボディ回り、そして足元などをつぶさに観察し、はぁ～とため息をつき羨ましがりつつ時間をつぶしていた。
名を呼ばれた。
席は相席となったが、混み合っている時はお互い様だ。お隣は耳の周りだけ白髪を残したナチュラルスキンヘアでスクエアのメタルフレームグラスをかけたいわゆる「ちょいワル親父」風だ。相対する自分は髪はまだあるが白髪まじりの逆さまつ毛、年中、瞳がうるうるとしている「ちょいヨイ親父」だ。バランス的にはよいだろう。
ビールを飲みながら名物の『バーコー』を単品で、それもニンニクをたっぷりとつけて食べている。相方の女性にもおすすめしていたが、「臭いから話しかけないで」と窘められていた。ちょいワル親父も立つ瀬ない。
さて、自分はといえば「カツ丼」の並を注文、娘達は迷うことなく「中華そば」だ。
いや、逆に迷いが生じた時ほど「中華そば」率が高い。しかし、それで正解だと思う。「中華そば」はいわば大衆食堂のバロメーターと言ってしまっても過言はなかろう。そして「カツ丼」の並だ。敢えて並を注文するのがこの「三勝屋」ではツウとされている。並は豚バラ肉を使用し、上は豚ロースが使われる。
初めての利用だが、恐らく店からは一目置かれる存在となっただろう。
「ごちそうさん」と隣が席を立つ。「前、すみません」と言い、自分の前に置いてある爪楊枝を取ると店から出て行った。見た目にそぐわず紳士じゃないか。
しばらくすると表から独特のエキゾーストノートが聞こえてきた。この低音と高音が織り成す独特のサウンドは間違いない。GT-Rのものだ。誰が乗ってんのかな～、なんてまたまた覗いてみたら、
「あ、ちょいワル親父」
そう考えると確かに身なりは良かった。掛けていたグラスも安物には見えなかったし、シューズはPRADAだった気がする。持っている人は持っているんだな、とひとしきり感心したあとで、てゆーか、今ビール飲んでたよね？
え～～～っ！
