氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

とうとうその日が…

帰宅すると娘二人が上がり框で正座をして待ち構えていた。正直、嫌な予感しかしない。

 

「ただいま」

「お父様、お帰りなさいませ」

言葉遣いにますます胡散臭さが感じ取れる。

 

「これはわたしが焼いたパンです。どうぞお召し上がり下さい」

と長女が小袋を差し出す。

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放課後に自立支援施設に通う長女の「本日の課題」はパン作りだったらしい。いつも中々美味しいパンを持って帰ってくる。

 

「ありがとう」

と受け取ると隙間を縫って逃げる様に小走りで走り去る。

 

「おいおい、ちょっと!話はこれからなんだよ!」

案の定、次女が追いかけてきた。自分の欲望を満たす為に姉を利用するのはいつもの手段だ。

 

「なんやった?」

「はい、ちょっとお話がございまして…」

またか。どうせ金の掛かる話に決まっている。

 

「あのね、私もう中一やん?でね、8月には期末テストがあるんやて。で、たぶんテスト勉強の為に夜更かししなくちゃならなくなるわけじゃんね?ということは集中して勉強をする環境が欲しいわけ」

う~ん、いつかきっと言ってくるだろうとは思っていたがとうとう来たか。要するに自分の部屋が欲しいってことなんだろうな。

 

「でね、学習机買って」

あ、ちょっと違った。そこまでスケールのデカイ話でもなかったか。ただそれって必要か?だっていつもは居間でテレビを観ながらとかニンテンドースイッチで動画を観ながら宿題してんじゃん。そんなのが学習机を買ってあげたからといってすぐさま机に向かうことになるとはどうしても思えない。それに勉強には集中出来る環境というものがあって、結局それが台所であったり居間であったりするケースはよく耳にする。

 

「あのね、仏間をあん子と二人で自分たちの部屋にしようかと思って」

「二人の部屋でいいのか?私の部屋じゃなくて」

「だって、仏間にひとりって怖いやん」

ご先祖様に見守れながらの勉強はさぞかし捗ることだろうよ。なにせ亡くなったお前らのお祖母ちゃんは猛烈に教育ママだったからね。

 

それはそうと我が家は純和風建築なので台所を除き畳の部屋しか存在しない。そこに学習机や椅子を持ち込むとなると、ただでさえ古い畳がいよいよとんでも無いことになるだろう。ウッドカーペットでも敷くか。今日は休みなので取り敢えず「ニトリ」にでも行って見てこよっと。

 

で、もらったパンのちっちゃいこと!

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