こちらからは見えぬ壁
障がい者が家族になった。
※障害者は害をもたらすものではないので「害」の字は使って欲しくない、といった多くの方々の考えから、自分もまた「がい」と平仮名表記するのですが、正直どちらでもいいです。なら使えよ、と言われればその通りなのですが、字面的に平仮名の方が優しいですもんね。
いちいち周りにそのことを説明する必要はないとは思ったのだが、付き合いのある主要人物、例えば上司であるとか、普段から仲の良い友人に知らせずにいた時のことを考えたときに、逆の立場にいたならば正しい答えなのかを考えた挙句それは無いだろうと決意し、先ずは上司にそのことを電話で伝えた。
彼は健常児の親だ。恐らく、障がいをもった者がいる家庭との付き合いなど無かったろう。すなわちこれが最初のこととなる。そうなれば当然、言葉の用意など出来ているはずもない。案の定、先ずは口ごもり、返ってきた答えは「そうか。なにか手伝えることがあれば言ってくれな」だった。
職場の近くでは偶然にも懇意にしている設計士の友人にバッタリと出くわした。彼は上司とも懇意にしていたので、どうやら先に知らされていたらしい。「その話は聞いた。大変かも知れないけれど、がんばって、としか言えん。ごめん」
当時、自分が店長を勤めていた飲食店の大家に出くわした時は酷かった。言われた言葉には無償に腹が立ちムキになって言い返してしまった。
「なんや?知恵遅れか?」
デリカシーに配慮せよ。そもそもデリカシーの言葉の意味を知っているかどうかも怪しいものだが、自分がその場に居合わせた第三者だったとしても「デリカシーに配慮しろ!」と彼に対して言ってやるべきだと思った。
「知恵遅れじゃないですよ!個性です!」
苦し紛れではあったがそう反論するのが精一杯だった。もう、心は泣きじゃくっていた。誰ひとりとして「おめでとう」の言葉を掛けてくれないのは、やはり娘は生まれてきてはいけない存在だったのかとつくづく考えさせられた。
拘束にも似た家族との過ごし方
市場で知り合った観光ホテルの出入り業者から、そのホテルのディナーチケットを頂いた。お宅とお付き合いをする代わりにイベントチケットの購入をお手伝いして下さいね、といったよくある話が入手の経路らしい。これを巷では「共生の原則」と呼ばれている。
ただ、手に入れた?入れさせられた?ものの、そのはけ口を見い出せないままイベント期間が終了してしまったのだが、場所を変えて同ホテルのレストランに於いては9月いっぱい利用出来るのだとか。
「5枚あげるで、絶対に家族で行ってね。それ以外で利用するなら金返してもらうで」
「わかったって。大丈夫。他に使う当てなんてないから」
「この、おっさん、そんなことばっか言うけどホント信用ならんで」
「何言っとんの。信用が服着て歩いているなんて、まさしくオレのことだよ」
正直、ホテルにディナーチケットといった組み合わせならば他に考えられることが無くも無い。ただ、5枚だしな~。2回行けたとしても1枚余らせるってのも何だし…。苦悩の末、せっかくだから公約通り家族で使わせてもらうことにした。
自宅からホテルまでは約7kmの距離がある。車で行くのが妥当だが、何度も言うが我が家は5人家族にも関わらず5人乗れる車が1台もない。といったわけで、知り合いのタクシー会社社長に手立てはないかとお願いしてみたところ、6人乗りのタクシーを手配して頂けるということで、その温情に甘えさせて頂くことにした。アルファードには初めて乗ったが実に快適だった。
2時間飲み放題付きということだったので、帰りもタクシーだと安心して飲める。ただ、ここで問題が生じた。たまの飲み会ならば会話も弾み、2時間程度ならば「あっ」と言う間に経過してしまうだろう。ただそれが家族となれば話は変わる。普段、家庭に於ける食事に費やす時間は長くて30分。5人が全員揃って2時間を費やすことなど、旅行での車中以外はそうそう無かろう。
「自宅警備員」を自称する坊主には相当、我慢が出来なかったらしい。「散歩をしてくる」と言ってホテルの外まで出かけて行ってしまった。その点、まだ女子はたくましい。アイスクリームと様々なデザートのリピートでなんとか乗り切ることが出来た。自分はといえばビールを赤ワインに変え、そろそろいい感じになってきた頃に何故か汗だくになって坊主が帰ってきた。
「尚子ロードを走ってきた」らしい。
「そうか、けっこうランナーいたんじゃね?」「いた」「よくそんな中、私服で走れたもんだな」「ジーンズ姿のおっさんが走ってたから、まあいいかな、って思って」
恥も外聞もなく全身汗だくでホテルに戻ってこられるその若さゆえの無神経ぶりは実に羨ましい。よい腹ごなしになったのか、その後はカレーライスをパクついていた。
坊主に聞けば、5人揃っての夜の外食は、今や高校3年生の坊主がまだ小学生の時以来だとのこと。凡そ6年が経過している。次回はいつになることだろう?出来ればおめでたい席であることを願いたい。願わくば近々に…。
幸せの「いいとこ探し」
「わたし遠近両用メガネ作らなあかん」
「あ、そう」
確かに老眼鏡をかけたり外したりと仕事をする上でその手間が面倒に感じるときは自分にもある。特に普段の視力がよい嫁にとってはその手間はより面倒なことだろう。
「作ればいいじゃん。JINSかZoffでいいんじゃない?それか赤札堂とか」
「Zoffが安いらしいね」
「もっと早く作っておけば良かったのに」
「それがさ、この間あまりにも目が見えにくかったから眼科に行ってきたんやて」
「ほう」
「それで視力測ったら0.6って言われてまって…」
「はぁ?」
思わぬ言葉に耳を疑った。
「え?嘘、なんで?だっておまえ視力だけが取り柄やったやん。5.0くらいはあっただろ」
「うん、そうなんやて。わたしにも視力が落ちた理由がわからんもん」
「ってことは、今ではオレの方が目がいいってことじゃん」
恐らく両方とも裸眼で1.0はあると思われる。とはいえ未だ腑に落ちない。先日の運動会での出来事だ。自分が探し当てられなかった娘をいとも簡単に探し当てることが出来たことだ。
「たぶん、目が悪いなんて思ってなかったからじゃない?」
理由としてはちょっと無理がありそうだが、ひょっとしたら目に見えぬ母娘の何かしらの絆が働いたのかも知れない。
そこでさっそく買いに連れて行ってやった。どこでも似たようなものだろうがZoffがお望みとのことだったのでテナントのあるモレラ岐阜を訪ねた。
「遠近両用って出来ますか?」
さっそく店員に訊いてみると遠近両用は通常料金に5,000円上乗せになると言う。他所のメガネ屋でもよく見られる光景だがここでもスタッフは全員メガネをかけている。
「どうしよ。どれかけても似合いすぎる」
遠慮もなくのたまう図々しさと優柔不断さは相変わらずだ。なかなかフレームを決めきれない。
「これなんかどうだ?」
痺れを切らし適当なフレームを選んであげた。
「これちょっと頭良さそうに見え過ぎじゃない?」
「頭悪いんだから良さそうに見えた方がいいじゃん」
と頭をよぎるも言葉にはせず、結局検査とフレーム選びに費やした時は約1時間半。出来上がりまで約2週間かかるという。
「しかしお前、目も悪いし歯も悪いし…」
歯医者通いも長きに渡っている。
「顔も悪いし」
自分で言うということは多少自覚がある様だ。
「おまけに性格も悪いとくればいいところ全くないな」
「ホントや、ははは!」
多少、おバカなのは逆によいところなのかも知れない。
ここ数年にわたり秋になると頂戴する「未亡人の手作り栗きんとん」。今年はついさっき作ったという出来立てホヤホヤのものを頂いた。滋味深く哀愁の漂う味わいは健在だった。
哀愁の『カレーうどん』@岐阜県大垣市「朝日屋」
大垣に用事があると必ず寄るのが「朝日屋」だ。何のことはない、見た目は普通に普通を重ねた大衆食堂なのだが、本来は手打ちうどんの店らしい。そんなことはおかまいなしに自分はいつも「カツ丼」をオーダーする。
普段、市をまたいでまでの移動はついて行くのも面倒と敬遠する坊主であったが、昨日は少しばかり理由もあり一緒に昼食をとることになった。坊主にとっては初めてとなる「朝日屋」だ。因みに娘達はもう何度も訪れているので頼むメニューも自分同様決まっている。
小さな店ながら昨今は市外のみならず県外にも名店として名を馳せ、日曜日ともなれば駐車場の空きを待つ車で行列が出来るほどとなっている。昨日も案の定、駐車場が満車状態だったので、車の中で暫し待つこととした。
ただ、駐車場が空いたからといって、すかさず席が用意されているとは限らない。車をとめた後も店先で待たされることは覚悟せねばならない。脳みそが既に秋とインプットされてしまっている9月も末だというのに、30℃を超す夏の様な暑さには、肉体よりも精神的なダメージを多くくらう様な気がするのは、大きく自分のナイーブでデリケートな性格からくるものだろう。
「4名様?少々お待ち下さいね」
スタッフが皆、愛想がよいのもこの店の特徴だ。いちど店に引っ込み戸を閉めたかと思うと、すぐさま顔を出して、
「裏の席ならご用意出来ますが…」
これには二女が喜んだ。「裏の席」というのが、以前から彼女が気になって仕方のなかった席なのだ。
「じゃ、そこでいいです」
と、通された席はどんなVIPルームかと思いきや、座敷にただ座卓が置かれただけの部屋で、まぁ、VIPっぽく個室には違いはないが、既に先客がおり相席を余儀なくされた。ただそれもこの店を深く知る上でよき経験となろう。
長女は「コロうどん」、二女は「中華そば」、そして自分は前述した通りの「カツ丼」だ。坊主が何をオーダーするか興味津々だったのだが、メニューをほぼ見ることもなく「かけうどん」などとのたまわりやがった。それではこの話がここで終わってしまう。
「お前、面白くない奴だな。もっと、こうウィットに富んだメニューを注文しろよ」
「食いもんにウイットが必要なんか?」
とは言いつつも渋々だったが「カレーうどん」を注文させることに成功した。
「俺さ、辛いもん食べると鼻水が止まらなくなるんやて」
と興味深い情報を公表しつつ食べ進めるうちに、どうにも我慢が出来なくなったのだろう。
「ティッシュ持ってねぇ?」
と訊いてきた。もちろん持ち合わせなどあるはずもない。
「あっかん、やべえ。トイレ行ってくる」
辛いものを食べると鼻水が止まらなくなる体質は遺伝なのか突発性の奇病なのかは知る由もないが、結局1杯のカレーうどんを食べる間に3回もトイレに足を運ぶこととなった。
店のスタッフにとってトイレと「カレーうどん」の往復を繰り返す坊主はどういう目で見られていたのだろう?ただ、うまい具合にネタを提供してくれたことは感謝の念に絶えない。
ついでに大垣での用事というのは「ロボフェスおおがき2019」だったのだが、IT系の坊主にとってはフェスそのものよりも開催場所である岐阜のITメッカ「ソフトピアジャパン」に興味が注がれていた様だ。所在する企業を興味深く見て回っていた。
「どろー」✖、「とぉるぉ~」〇
午後4時。傍らに置いてあるiPhoneの着信音がけたたましく鳴る。この時刻に掛けてくるのは決まって電話魔の奴だ。iPhoneを手に取り画面をみる。そこには大きく二文字「自宅」と表示されていた。
「もしもし…」
「あ、お父さん?私、あづ」
「うん、わかってる」
自宅とかかれた文字からはそれしか想像が出来ない。小中学生には携帯は必要がない、そう考え与えていないからだ。要するに家電(いえでん)の番号が「自宅」と表示される。それよりも何よりも、用事も無いのにほぼ毎日のことだからだ。
「あのさー、帰りにさー、百均で洗濯のり買ってきてくれぇへん?」
「えっ?この間、買って帰ったじゃん」
「あれではダメなんやて」
「なんで?」
「こう、どろーっとし過ぎて使えんのやて」
説明しよう。次女は最近、スライム作りにハマっている。スライムといえば昨今は「ドラゴンクエスト」のモンスターだが、いや、既に昨今ではないか?まぁいい。実はその昔、緑色のプラスチック容器に入れられ玩具として売りに出されていたことがあった。それも今や手作りで出来てしまう時代となった。
ってゆーか、小学校や子ども会の何かしらの行事で「スライム作り」なんてことをよくやっているから正直そこまで大袈裟な話でもない。会話は続く。
「『クスリのアオキ』で買ってきたやつではダメやよ」
「『ゲンキー』ならいいのか?」
「じゃなくて、どろーっとしたのがダメなんやて」
「洗濯のりなんて皆どろーっとしてんじゃん」
「いや、どろー、じゃなくて、とろーじゃないとダメなんやて」
「とろー?」
「違う。とぉろーやて、とぉろー」
「とぉろー?」
「いや、もっと、とぉるぉ~って感じかな。いい?とぉるぉ~やよ、とぉるぉ~」
「わかった、わかった。とぉるぉ~、やな?」
「いや、そうじゃなくて」
「もういいわ!」
要は百均で買ってこれば済む話だ。スライム作りは趣味と言い切る次女。物作りが趣味というのは予算云々を抜かせばまぁ、褒められる趣味といえるのかも知れないが、とはいえもうちょっと人の役に立つ趣味は無いものだろうか?それに大量に生産されたスライムは今後どうなるのだろうか?何か使い道があれば誰か教えて欲しい。ただただ先行きを憂う。
プレジデントチェア故の功罪
iPhoneのアラームで目が覚めた午前2時50分。いつもの起床時刻だ。ただいつもと少し違うのは目覚めた場所が椅子の上、要するに椅子に座ったまま寝落ちしていたということ。
椅子に座ったまま寝落ちするくらいのことは誰もが一度や二度、いや三度や四…まぁいい。とにかく経験がないという方がむしろ珍しいことだろう。斯く言う自分もまた何度か経験がある。それは例えば飲み会の帰りのバスの中だったり、まさしく飲み会の真っ最中だったり、自宅飲みで撃沈したりと酒が絡むと大抵そうなる。まともで健全な寝落ちは仕事中くらいなものだ。
で、今回、何が言いたいかというと、ただの寝落ちにも満足がいく寝落ちと納得がいかない寝落ちがあるということだ。
自分にとっての満足がいく寝落ちとは、目覚めたときが例え椅子の上だろうが、時計の針は夜中の1時だったりする場合。この様なときは、あ~、まだ布団の上で1時間50分も寝られる、と少し得した気分になれるのだが、今朝の様に寝落ちしてから起床せねばならない時刻まで椅子の上だと思いっきり損した気分にさせられるのだ。
まぁ、たしかに晩酌がその原因のひとつであることは否めない。そしてHuluで観た映画があくびも出るほどつまらなかったのが眠りを誘引したに違いない。なら観なけりゃいいじゃん。うん、そろそろ真面目に解約をしようかと考えている。だって「ウォーキングデッド」がどんどんつまらなくなって来たんだもん。
とはいえ、きっとそれだけのことではないだろう。もっと大きな要因があるとするならば、椅子の上に於いても確実に季節が移ろいでいるということではないだろうか。
そして夏場に活躍した「リセッシュ」もそろそろお役御免となる時がやってきた。
うん、今日も綺麗にまとまった、…かな?
GABAでデキストリンなピンクと抹茶
ひょっとしたら自分は病んでいるかも知れない。
9月の平均気温が過去最高となるかも知れないとラジオでニュースキャスターが話をしていた。それが病にいっそう拍車をかけた様だ。話は一昨日に遡る。
最近は事務的作業による一時的な精神ストレスが多いような気がしてならない。加えて食後の中性脂肪や血糖値の上昇が気になってしょうがない。そんな時は我が掛かり付け医を訪問することにしている。そう「クスリのアオキ」だ。
なんという偶然だろう。今日は運良く「水曜ポイント5倍デー」の日じゃないか。少しばかり澱んだハートに清水が流れ込んだ、そんな気がした。
ふとドリンクの棚に目をやると、カフェオーレが二つ仲良くならんでいる。何故かふと目をやる先に何かが仲良くならんでいる光景をよく見かける。それがいつのことだったか何の話だったかは忘れてしまったが、とにかくそういうことがよく起こる。
「ピンク」と「抹茶」
カフェオレなのに、色目がこの2種類であったことに目を惹かれたのは迂闊だった。当初はただのいちご風味、抹茶風味というだけの邪道なカフェオーレだろう、などと高を括っていた。
ところがたかがカフェオーレくんだりに偉そうな但し書きがある。
「事務的な作業による一時的な精神的ストレスを緩和する」
「食後の中性脂肪や血糖値の上昇を抑える」
えっ?なんだと?!
それはまさしく今の自分に必要なことではないか!!
オマケによぉ~く見ると、価格が「おつとめ品83円」になっている。
まさに千載一遇のチャンス!…で、ピンクと抹茶の両方を即座に握りしめレジへと向かったのである。
結局、体調の不良も、往々にして精神や肉体のバランスに乱れが来ていることが多い。となれば、栄養補給もバランスが必要だろうということで、ふたつ同時に摂取を試みた。
「同じ味やんけっ!!」
見た目の違いこそあれ、味は全く一緒だった。が、一時(いっとき)でもその言葉を信じ、和みやバランスを期待し、結果、騙されたとしても、騙されたもん勝ちの様な気がする。今回は自分の様なひねくれた治験者のせいでメーカー側に多大なるご迷惑をお掛けすることになったとしても、十分にプラシーボ効果は実証できた…かと思うが、これがプラシーボ効果を狙うものではなく、メーカー側の実証に導き出された真実だとしたならばどーもずびばせん。