氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

男梅を巡る血で血を洗う攻防

仕事帰りに『ゲンキー』に寄ると、ショーケースの廉価版コーナーに「男梅ゼリー」が2つ仲良く並んでいた。廉価版コーナーにわざわざ置くということは、きっとヒット商品に繋げたいといった思惑があるのだろう。ならばたった2つといわずもっと置けよ、と思ったのだがひょっとしたら爆発的に売れまくりたった2つだけが売れ残ったのかも知れない。


その残りの2つが此方に向け熱き視線を送ってくる。いけないとは思いつつ、一度でも目を合わせてしまったのは全くの不覚、いわば運が尽きた。たかがドラッグストアが岐阜タカシマヤ6階の紳士服売り場、それもブランド品売り場と化す。思わず目線を逸らそうとするもそうはさせじとにじり寄り語りかけてくるのだ。
「ねぇ、買って。お兄さん、いいでしょ?買ってよ」
いや、空耳ではない。確実に、それも男の声で語りかけて来るのだ。

「おいおい、ちょっと待てよ。俺ゃ、男だぜ。つまり男同士ってことだよ。それはちょっと倫理に反するだろ」
とその場を離れようとするも瞬時に回り込まれ、そしてカップ2つ掛かりでの羽交い締めに心を折られ、敢えなくその場で膝をも折ることとなった。

次女に「はい、おみやげ」と『男梅ゼリー』を手渡すと、
「きゃー!きゃー!嬉しー!こんなのあるんやね?なにぃ、お父さん!私が喜ぶと思って買ってきたの?」
「うん、まぁ、そういうことだ」
当然、次女は『ゲンキー』での血で血を洗う攻防を知る由もない。

 

因みにに彼女は男梅に目がない。出かける時に持参するカバンの中には必ず「男梅グミ」を忍ばせているし、顔見知りに会うと「これ食べゃ」と景気良く配ったりもする。将来はきっとヒョウ柄が似合うおばさんになるに違いない。

男梅ゼリー』にしてもいくらおっさんずラブが流行りだとはいえ自分の様な中年の腹に収まるよりは、本当に好きな人に食べてもらった方が嬉しかろう。とはいえ、自分はいったい長々となにを語っているのだろうか。これもきっと猛暑だった今夏の余波に過ぎない。

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男梅ゼリー