40分間の有意義、且つお得な過ごし方・ノックダウン編
中学の授業が終わると、その後は自立支援施設でお世話になるのが長女の日課だ。
月に半数ほどは利用させて頂いているだろうか。内容は将来の就職に向けた作業訓練が主である。とはいえどそこまで堅苦しいものではなく、遊びを取り入れたものも中には多々あり、特にパン作りの日には喜んで作品を持って帰ってくる。先日はワッシャーを木の棒にさして並べる実務に近い訓練だったらしいのだが、それが余程上手に出来たらしく、先生方に「高校生に引けを取らない速さだ」と褒められていた。小手先の技が得意なのは大いにパパのDNAから来たものであると断言しよう。
で、けして娘の自慢がしたいわけではなく、その娘を毎日午後6時に迎えに行くのがこれまた自分の日課だ。仕事を終えその足で迎えに行くのだが、施設までは掛かっても20分あまり。つまり40分ばかり時間が余るのだ。
何か用事があるならば何も問題ない。例えば先日の様にどうしても「スタアバックス」に潜入せねばならない特命を受けていた場合とか、スーパーフライデーの特典である「サーティワンアイスクリーム」の引換券をもらいにわざわざ大型ショッピングモールまで出向く必要がある時などである。ただ、いわゆる用事がない時は時間を潰すに手持ち無沙汰でならない。
先日も、ただの暇つぶしのつもりで施設への道中にある「シューズプラザ」を覗いてみた。確かに仕事用として使っている靴がかなりへたってはいたのでそろそろとの思いはあったのだが、その時は買い物をしようという気持ちなどは一切なかった。それが証拠に財布は車の中に置きっぱなしだ。
店内をぶらついては買いもしないのに手に取っては棚に戻しと過ぎる冷やかしを楽しんでいると、ふと赤いラベルが目に付いた。
「好評につきラスト1足」Sale¥4,900となっている。アディダスは好きなブランドだ。それこそ中学で陸上をやっていた自分にとっては、アディダスとその名を聞いただけで動悸息切れがするほどの貴音の花だった。今でこそお安く手に入る商品も多々あろうが、今から40年以上も前となれば頷く同世代は多くいようかと思う。
色、フォルム、軽さ、ついでに履いてみた感想ともに普段使いとしては実に良好かつ好みのものだったので、思わず衝動に走ってしまった。
「ごめんなさい。財布を車に忘れました」
といいつつ、商品をカウンターに乗せ外に出ようとした瞬間、ふと「アプリクーポン利用で10%オフ」と書かれた看板が目に付いた。当然、アプリなど持とうはずもない。財布を取りに出たついでに、App Storeでアプリを検索。早く落ちろ、はよせんかいっ!などと速やかなダウンロードを心で祈る。終了すると店内に入り足早にカウンターへと向かう。アプリを立ち上げ表示されるクーポンを水戸黄門の印籠が如く「どやっ!」とばかりにマッハで提示した。が、こちらの不安な期待を他所にあっさりと10%オフとなった。ラッキー☆
自分の作業はここで終わりではない。一体全体、元値が幾らだったかを確認せねばならない。そーっとセールの値札を剥がしてみる。
¥6,990とあった。ざっと30%引きとなっていたわけだ。それを更に10%引きとしたのだから計算してみると概ね37%オフとなる。
あとは同条件、この場合はサイズは26cm、色はネイビーでのネット検索だ。Yahoo!ショッピング、Amazon、楽天等々、つぶさに検索した結果、Yahoo!ショッピングの¥4,563が一番お安い価付けだった。ただしこれには送料が660円掛かる。となればトータルで¥5,223となり勝負あり!と思いきや、ボーナス還元として25%、具体的に数字にするとPayPayキャッシュバックが1,080円相当、Tポイントが45ポイント、合計1,125ポイントが還元される。となるとトータルで¥4,098となり、ここで試合終了のゴングがなった。
カンカンカンカン…
まるで矢吹ジョーの左ストレートに合わせ力石徹の右のクロスカウンターが来ると思いきや、意表をついてダッキングした姿勢から放たれた力石の強烈なアッパーカットにより宙を舞わされたジョーの気分だ。
「終わった、何もかも・・・」
因みに¥4,900の10%オフ、¥4,410に消費税10%を上乗せした金額が請求額になる。つまり¥4,851だ。
「まいっか。暇つぶしにもなったし」
タイムイズマネー。時間を金で買ったお話…なのか?