氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

マンボーで禁酒法時代到来

久しぶりに市場へと足を運んだ。起床時刻は就業時と変えずに過ごしている。よって早朝から出向くことに欠片も苦労はない。とはいえ好きな時刻に寝られる今の立場からすれば自慢出来ることは何一つとしてない。むしろ当たり前といえば当たり前のことだ。

 

取り敢えず老夫婦が営む場外の八百屋に顔を出してみた。毎年、シーズンになると枝豆を仕入れに行く八百屋だ。そろそろその時季が始まる。

「枝豆が始まったら、まーちょっとはお客さんも戻るかと思ったら、まぁ~た始まってまったでどうにもならんわ。お客さんも来やぁ~へんで商売にならん」

と案の定、ボヤいていた。

 

「これ、持ってって。置いとてもどうせ腐ってまうで」

とキャベツ2個と絹さや2袋を頂いた。

 

魚屋へ顔を出す。番頭さんにお久しぶりとご挨拶を交わし、その後は買付けに来ている慣れ親しんだ店主達と雑談を交わす。

「どうするの?休まへんの?」

「いや、うちはもうずーっと休んでるから。店を開けても売上よりも経費の方が大きいから。休まないの?」

「一応、やるつもりだけど、まぁ休むか休まないかはお客さん次第やね」

「お宅はいいわ。料理屋さんだから。目的は飲酒じゃないでしょ?」

「いや、そんなこともないよ。夜はけっこうお酒もでるよ」

「じゃ、明日からどうするの?」

「え、なにが?」

「なにがって明日から酒も売ったら駄目ってなるよ」

「え、嘘」

「いや、ほんと」

魚介類も軒並み値崩れを起こし価格破壊の様相だ。通常営業だったら片っ端から買い漁っていたことだろう。

 

マグロ担当の仲買からなぜかマグロではなく高級ウィスキーを頂く。

「お客さんからもらったんやけど、僕ウィスキー飲めないから」

と「山崎」の12年物を。

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お次は肉屋へと向かう。ここでも同じ様な世間話を繰り返すが、その中で緊急事態宣言が発令されようも時短要請を無視して営業を続ける飲食店に話が及ぶ。

「そりゃ、罰則があるっていうだけで具体的にどうこうされたって聞いたことないですもんね。国家の威信にかけて、という姿勢が全く見られませんもん」

なるほど。一理ある。

「これが法律で決まったことなら、営業する方もそこを利用する客にも罰則がなきゃだめでしょ。違法カジノだって両方捕まりますもん」

極端な話だがそれが出来たならば間違いなく見せしめにはなるな。

 

肉屋では惣菜の「鶏唐揚げ」と「チキンカツ」を購入しPayPayで支払った。ただいま「やっぱ岐阜やて!“対象店舗で最大20%”たんと戻るよキャンペーン第2弾」が開催されている。237円の残高付与があった。お土産にとコロッケと叉焼に鴨ロースの燻製を頂いた。

 

なんかもらってばっかりだけど、けして物乞いをしに市場へ来たわけではない。それだけは最後にお伝えさせて頂いて、一先ず本日からの蔓延防止等重点措置を乗り越えて一刻も早く正常な社会を取り戻したい。業者とも一蓮托生だ。

 

そして店に寄り冷蔵庫の中を片付け空っぽにしてから電源を切る。

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焼け石に水かも知れぬが、多少は電気代を抑えることが出来るだろう。

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