氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

予約してはいけない大衆居酒屋

友たちとの飲み会も今生では最後やも知れぬと蔓防施行前に飲み会をしようとなった。駆け込みといえば余り聞こえは良くないが、つまりはそういうことだ。このメンツでの行きつけの、地元の居酒屋に何度、電話をしてもつながらない。きっと休業しているのだろう。

 

行きつけではないが地元で開業している別の大衆居酒屋に電話をしてみると時短だが営業しているということなので予約をお願いした。

 

「え、予約?」

「はい、4名でお願い出来ますか?」

「じゃ、一応、席だけは取っておくね」

自分達の様に駆け込み客が多く見込まれると想像して予約を入れておいたのだが、電話の応対だけで判断するにどうやら変わった客と思われたらしい。

 

5時からの予約だったが、多少フライングして15分前に入店すると既に2名、3名の二組がいた。

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店に店員らしき姿は見えない。暫し、入り口で立ち往生していると厨房から頭にタオルを巻いた恐らく店主らしき男性が出てきた。予約名を告げると無言で指を指す。見ると店の一番奥に皿が並べてあるテーブルがあった。どうやらそこに座れという意味なのだろう。素直に従い着座すると、先に飲み物の注文を促される。メニューに「生大」があったのでお願いした。

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しばらく後、「生大」を3つと「コーラ」をひとつ手に持ちテーブルにやってくると、

「すみません。検温させて下さい」

と検温器を額にかざす。全員が36℃台でクリアしたのは良いものの、1人でも高温だったらこのドリンクはどうなるのだろう。

 

ついでに食事の注文をくれと言う。何も考えてなかったが、壁に貼ってあるメニューから視力が届く範囲で適当に注文。

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「こういうのがいんだよな~。まるで健さんが居酒屋やっている様なぶっきらぼうなの」

「ま、それで美味しければ問題ないな」

「やたらと愛想だけ良くてクソ不味い店よりはこの方がいい」

「クソ不味いかは食べてみなけりゃわからんけどね」

「いや、ここみたいにそこそこの老舗に間違いはないだろう」

 

壁のメニューも何年変わってないのだろうという風格を感じる。歩くと床に足がくっつくのも老舗の証だ。

途中からアルバイトだろうか、愛想がやたらと良い娘さんがホールに入ると途端に店内が華やかになる。見ると既に店内満席となっていた。訝しげな電話対応だったが、やはり予約をしておいて正解だった。

 

ビール党は各々「大ジョッキ」を3杯から4杯は飲んだだろうか。その他につまみとなるものを10品程度頼んだと思う。

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各々の数は酔っ払っているのでほぼ覚えていない。7時となりドリンクのラストオーダーを聞きに来たので「いや、けっこう」とお断りしお会計をお願いした。

 

お会計は1万円弱。因みに食事は何を食べても美味しかった。なんか色々と負けた様な気がした。

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