悲喜交々な孤独という自由な時間
一夜明けたどころか目が覚めたのは陽も高くなりつつある午前10時だった。前日の酒は既に抜けているとは思うものの頭の中身がが上手く回転しない。明らかに深酒による後遺症だ。別名、二日酔いともいう。ここ2、3年、ここまで症状を悪化させたことはなかったので実に久しぶりのことだ。
家族は既に全員が出かけている。そう、前日行われた会社行事の代替日として昨日は休みをとっていた。前日までの予定では、来たるべく11月10日のマラソンに備え山岳コースを舞台にロング走を敢行しようと意気込んでいたのが、時計を見た途端にその気持ちも大きく萎えてしまった。ただ早起きが出来たとしてもコンディションがあまりにも悪いことが自覚出来たので、1kmばかり走ったところで道に倒れて誰かの名を呼ぶ気力さえもなかっただろう。
そんなこんなで棒の様にボーッとしながら午前中は過ごしたのだが、せっかくの家族がいない休日をこんな無意味に過ごしてはお天道様に申し訳ないと気をとりなおし、寂れた身と心をお洗濯しようと比較的身近にある温泉へとレッツらゴーしたのだった。
奇石、珍石が採取出来ることで一部のマニアからは有名な根尾川のほとりに「根尾川谷汲(たにぐみ)温泉」という名の日帰り温泉がある。我が家から実測するとたった7kmしか離れていなかった。それこそ二の足で走ってでも行ける温泉だ。
施設内にはサウナなどもある。滞在時間の三分の一はそちらで費やしたかと思うが、80℃に満たないいわゆる低温サウナであったため、汗をかくためには必然的にそれだけ時間がかかっただけという理由だ。
露天風呂も一頻り堪能し、疲弊した肝臓のみならず、普段の使用頻度が高いあんなところや、ここのところめっきり出番が少なくなったこんなところまでびろ~ん、びろ~んと伸ばしに伸ばしまくってきてやった。
温泉の〆とばかりに飲んだコーヒー牛乳が脱水症状気味の心身に血液が如く音を立てて染み渡るのがよくわかった。当然、左手は腰がスタンダードだ。
帰宅したら既に次女が学校から帰ってきており、干してあった洗濯物を取り入れ畳んでいてくれた。
「あれ、早いな」
「うん、1時なんたら分に終わった」
曖昧さがいつも通りの安定感。
「そうか、じゃ何処か一緒に行くか?」
「あ、ごめん。親友のココアちゃんと3時から遊ぶ約束しとるんやて」
「ココアって…、あぁ、犬の散歩か?」
「だから犬じゃねぇっつーの。人間やっつーの」
3時にならないと自宅を出てはいけないという学校の決まりがある様だが、3時前には「行って来ま~す」と自転車に乗って行ってしまった。不良娘め。親の顔が見てみたい。ジーッと鏡を見つめる。
そして、再び誰もいなくなった。
ひ、じょうに、さびしー!!