氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

人生の岐路を考える@『大衆食堂 まつ』

「定食屋がいい」との坊主の言葉を受け、一路『大衆食堂 まつ』へ車を走らせた。昨日のランチのことだ。

「なんだ、その店は?」「そんな店、聞いたことないぞ」「存在しない店をでっちあげているだけなんじゃないのか?」「ホワイト国から除外するぞ」等々、ありとあらゆる罵詈雑言が聞こえて来そうなのでこの場を借りて釈明してやろう。それも、そのはず。自分ですら聞いたこともなければ敷地に足を踏み入れたことすらない店だからだ。

今時の定食屋といえば『大戸屋』や『やよい軒』の様に近代化が進み、スマート&スピーディー、尚且つ合理的なサービスが売りのいかにも店舗展開しやすいスタイルが主流となりつつある。

一方、よき昭和の時代から暖簾を守り続け今にいたるといった、逆に不合理を売り物にした様な店は今でもあるにはあるが、自らが子どもの頃に親に連れられ通った多くの店は暖簾を下ろすだけでなく道路になってしまっていたりもする。後継者不足も大きな理由のひとつだろう。

前置きはこの程度にしておいて、いよいよ本題は『大衆食堂 まつ』である。口頭では確実に説明出来ない場所にある。説明しにくい、ではない。説明出来ないのだ。ただでさえそこへの辿り方が説明しがたい裏道の、更に細い路地を入ったところに辛うじて所在をしめす看板が見えた。

駐車場は狭い。入口付近には学生のものと思われる自転車が二台とめてあった。タイヤカバーに貼ってあるシールからすると、かなり遠方にある中学校の生徒の様だ。わざわざここまで足を運ぶ価値がなんとなくにじみ出てはいるが、そうとは思わせないエントランスの風景は圧巻のディック・マードック風ブレーンバスターだ。

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エントランス

店内には奥の間がある。本棚に囲まれている壁は漫画本でびっしりと埋め尽くされていた。これが遠方からわざわざ足を運ぶ中学生の決め手というか所以なのかも知れない。

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奥の院


メニューは定番を極めたものが殆どだったが、一品だけ妙に目を引くものがあったのでそれを注文してみることにした。「こちらサービスで赤だしかスープかおすましが付きますがどれになさいますか?」「サ、サービスなんですか?」「はい」妙に愛想のよいご亭主だったからというわけではないが、この場は赤だしをお願いした。

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豚とろ~トン

メニュー名は「豚とろ~トン」という。「丼」ではない、「トン」だ。全てありきたりのメニューの中で唯一異彩を放っていた。価格は500円。特に大盛りを頼んだわけでもないのに普通が大盛りで完食はしたもののその後の身動きに辛いものがあった。ただ、気に入った。坊主もどうやら気に入った様子だ。奴の定義の中に「自宅で営む大衆食堂に外れなし」というのがあるらしい。

こういった商売もいいかもな…。

将来の身のふり方を少しばかり考えてしまった。話を少し戻すが、窓からはたわわに実るキウイの木を拝むことが出来る。暇つぶしにその実の数をかぞえてみるのも楽しみ方のひとつだ。

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キウイの樹

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