氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

ハリウッドスターは40円を演技する

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う、嘘じゃない!ホ、ホントだ!信じてくれ!

 

「のり弁」が40円で売っているからと買いに行ったわけじゃない!たまたま、そう、たまたま行ったら「のり弁」が40円で売ってたんだ!キミだけは信じてくれるよね?

 

誰やねん、キミって。はい、嘘で嘘を塗り固めた巻頭文はここまでです。

 

本家かまどや』が創業40年を記念して「のり弁」を40円で売り出すという。

 

但し11月7日の1日限定、1店舗につき100個限りだということだ。ネタ拾いというわけではないが行ってみた。はい、わたくし、また嘘をつきました。完璧なネタ拾いです。

 

さぞや大盛況なことだろう、行列でも出来ていたらどうしようかしゃん?時間は午前11時20分。ひょっとしたら既に売り切れているかも知れない。などとブツブツつぶやきながら現地に着いてみると人どころか車の1台すらとまっていない。こりゃ、完璧に売り切れケースだな、と一先ず覚悟だけは決めておいた。

 

入口ドアには確かに本日限定と銘打って「のり弁」を40円で販売すると書かれていた。恐る恐る戸を開ける。

 

「あの~、すみません。のり弁ってまだありますか?そこのドアに貼ってあったのを見たんですが…」

ここは勝負のしどころである。如何にもたった今知りましたということをハリウッドスター並に伝えなければならない。見た目はジョージ・クルーニーなので十分にクリア出来ているとしても、肝心なのはの演技力の問題だ。

 

「あ、はい!まだありますよ」

スレンダーで小奇麗な女性だった。年の頃なら45歳くらいだろうか?不覚にも「のり弁」より先にそこに食いついてしまった。いかん、いかん。

 

「本当に40円なんですか?40円でいいんですか?」

「はい、大丈夫ですよ~(満面の笑み)」

「表の貼り紙見てビックリしちゃいまして…(嘘)」

「そうなんですね。今日は皆さん、知ってていらっしゃる方ばかりでしたよ」

「へぇ~、そうだったんですね。全然、知りませんでした(嘘)」

 

どうやら相手の女性も自分のあまりの演技力とルックスにまんまと騙された様だ。

 

「消費税は別ですか?」

「いえ、込みの40円です」

当然、それも知っていた。お釣りが出ない様に予め40円を財布の中に忍ばせておいた。

 

「レシートって出ますか?」

「レシートは出ないんですが、領収書なら書けますよ」

「え…、でもたかだか40円に領収書なんて勿体無いです」

と、さすがに断ろうとしたら、

「いえ、なぜか今日は皆さん領収書を下さいって言われるんですよ、のり弁の方ばかり」

と言いながら、領収書を書きつつ顔をチラと上げた口元がニヤリとして見えたのは気のせいだったか、はたまた自分の壮大なる計画が見透かされていたのかは知る由もないことは知る由もない。

 

あ、でもわざわざ弁当だけを買いに行ったわけではなく、『本家かまどや』の近くに用事があったついでに行ったわけでして、そこ「だけ」は本当の話。

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