業務上、避けて通れぬ役得という罪
仕事上の付き合いとならばどの様な業態においても「持ちつ持たれつ」の関係は存在する。先日触れた、「ホテルの出入り業者はそのホテルで行われるイベントチケットを買わされる」といったエピソードも、謂わば「持ちつ持たれつ」の関係と言ってしまえるだろう。「共生の原則」とその時は紹介した。
だが、その出入り業者にもお客様と崇め奉るまた更にその下となる業者は存在する。きっと探ったところでキリがない、まるでマリアナ海溝の底辺に至るほど多重で見たこともない業者との付き合いが存在することだろう。消費者が漁師の顔を知らぬ、もっというならば間に蒲鉾業者を挟めば更に複雑で多岐に渡った流通経路が生まれるということだ。
言わずとも我々飲食業界にしろその様なことは往々にしてありがちで、「神様仏様」と崇め奉る下部業界はたしかに存在する。「いや、けっこう」などとこちらがいくら断ろうが、どうしても、どうしてもとお願いされれば「しょうがねぇなぁ」となることもまた往々にしてある。だがそれもまた、彼らにとっての営業だと割り切る様にしているのだ。
日本中の飲食メーカーがこぞって料飲店に媚を売る、「提案&サポート」を大義名分とした試食試飲会が年に数度開催される。今回は名古屋の大規模展示場で開催された。
試食試飲などと「お試し」感をイメージさせはするのだが、平たく言ってしまえばまるで宴会さながらな飲み放題食い放題、それもほぼ時間無制限のグダグダなイベントなのである。
我々はあくまでもお客様。「しょうがねぇなぁ」とは心の底から思いつつも嫌々ながら招待に応ずることにした。招待されたわけだから当然、全て無料で飲食する権利を賜ることが出来る。
非情に心苦しいのだがあくまでも招待されてしまったわけだから、甘んじて受ける以外、他に選ぶ術も方向もない。
この様なシチュエーションだと、直ぐに
「どうだ~、いいだろ~、うらやましがれ~、ひれ伏せ~、敬え~、靴底舐めろ~、これぞ役得役得ぅ~♪」
などと高慢無礼な物言いで下々のものを蔑むがごとく口にする輩もいたりするものだが、自分はけしてそういう類いではナイチンゲール。
しかし、あれだ。懐石料理の様なちょこちょこ食いは直ぐに腹がいっぱいになるとよく聞く。それ故にひと品ひと品の量は少なめでもかまわないと。まさにこの試食がそれだ。本当に味見程度にしかならない量だとしても、ナイスミドルのやせ細った胃袋を飽和状態にする程度のことは朝飯前だ。朝飯前に胃袋が飽和状態とはどういうことだろう?まぁいい。とにかく年月を経るに従って情けないかな食が細る一方だ。
で、ここで再び、結局なにが言いたいかというと、
「一人よりも二人だったらもっと楽しくたくさん食べられるんじゃないかな~?」
とこう言いたい。ただ、多少の酒も入るので口説かれる覚悟でご応募お待ちしております。