氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

一ヶ月検診・最終宣告

いよいよ一ヶ月検診の時が来た。心待ちにしていたといえば語弊があるが、自身の今の生活に於ける進退が問われる時、大袈裟にいえば我が身の自由、並びに心の開放感を得るか、それとも生涯、我が娘に隷属するかを問われる時が到来したということだ。当時は正直、これほどまでの切迫感があった。

 

まだ真剣に障害という事実に向き合う為の知識も教養も持ち合わせてはおらず、単にこれから眼前に繰り広げられる針山の惨状や血の海に真っ向から対峙してやる、といった意識の強化を自らの意思でもって構築することも考えられなかったし、そのことにしても実際に何かしらの不自由をタイムリーで被っているわけでもない。要するに想像出来ないことを想像しろということは降って沸いた出来事、いわゆる青天の霹靂ゆえ出来ないし考えられない、考えたくもなかったことだ。

 

だが、医者の言葉は非情に響く。

「検査の結果、21番目の染色体が1本多い、21トリソミーという症状です。世間一般的にはダウン症候群と呼ばれています。」

神妙な面持ちにもの凄くスローな口調で、一語一語慎重に選びながら発せられる言葉に先生の苦悩が読み取れ、逆に言いたくもないことを言わせてしまっているということに申し訳なく思ってしまった。

 

結果は想像出来ていたとしても、やはり家内には耐えられるものではなかったのだろう。知らぬ間に嗚咽を洩らしていた。その時のことを後に、産婦人科でいわれた「母体に何らかの影響があった」と言われた言葉に拭いきれぬ罪悪感があった、と言っていた。

 

検診の後、看護師から様々なアドバイスを頂いた。療育施設に関する情報、ダウン症にまつわる様々なコミュニティの紹介等々、本当に親身になって教えて頂いた。取り敢えず出来ることは何でもしよう。ただ、本人の覚悟を他所に世間の風当たりは思いの外厳しく、心にズンと来るものも多々あった。乗り越えねばならない別問題が新たに存在したことに気がついた。

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