氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

「私が出したものは私のもの」理論に基づく怒りのバロメーター

別に無視をしたわけではない。ただマナーモードになっていただけだ。

嫁から着信があったので電話に出ると、先ほどから坊主が自分宛てに何度も電話をしているのに一向に出る気配がない、だから私に掛けてきた、といった内容だった。マナーモード継続中であったため、嫁からの電話に気がついたのは偶然中の偶然といえよう。

「で、内容はなんだった?」
「えっ?知らん。かけ直してあげて」
「なんじゃそりゃ。聞いとけよ」
これをポカと呼ぶのには、余りにも多く回を重ねて来ているものだから、もはや日常と呼んでしまっても差し支えないレベルだ。

改めてiPhoneを見ると、たしかにLINE通話の着信が4度ほどあった。折り返し電話を入れる。
「おぅ、どうした?」
考えてみれば坊主から電話がかかってくることなど滅多にない。LINEを送ったところで返事は「り」か「K」、もしくは写真を送ってくるくらいなものだ。で要件を問うと、
「迎えに来て」
ということだった。自宅から片道約10km先の高校まで自転車で通学している。にも関わらず迎えに来いということは何かしらのトラブルに見舞われたということか?

「パンクした」
オマケにリムがひん曲がって走行不能だと。オレはお前のトランスポーターじゃねぇぞ、と言ってやりたかったが、帰りにパンクをしたというならともかく、どうやら通学の途中でパンクをしたらしい。そのまま学校に置いておくわけにもいかず、致し方なし。自転車ごと迎えに行くことにした。

「お前さぁ、パンクはともかくとして、リムがひん曲がるなんてちょっと自転車の運転が荒すぎるんじゃね?もっと大事に乗ったらどうなんだ」
「オレが悪いんじゃねぇって。オレに付いてこれん自転車が悪いんや」
「めちゃくちゃ言うな、お前。まぁ、いいけど家でそれ言うなよ。喧嘩になるから」

面倒なことに自転車「だけ」は嫁の財布から購入資金が支出されている。だから、嫁が理由を知れば烈火の如く怒り狂うことだろう。この時点では自分が迎えに行っていることも知らないはずだ。取り敢えず家路につく。

帰宅すると次女が飛んできて、
「お父さん、タイヤパンクした!多分、パンクやと思う。ぺっちゃんこやもん」
「え”ー、お前もか?」

「お前もってなに?」
ここで耳ざとく嫁が登場する。それで口下手な坊主に代わりことの経緯を自分から話すと案の定、
「なんであんたはもっと大事に乗らんの?いい加減にしやぁよ!」
となるわけだ。ここまでは想定内。
「オレが悪いんじゃねぇって。オレに付いてこれん自転車が悪いんや」
とこれは想定外。
 
人の話をちゃんと聞けよ。

あとは推して知るべし。ここから先は自分の領域にあらずと、次女の自転車の修理にかこつけてエスケープを決め込んだ。

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前かごを外してわざわざ後ろに付け替えた仕様 by 宅の坊主