氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

「令和元年度Graduation ceremony」 対 「新コロ野郎」

全国的なのか局地的なのかゲリラ的なのかはわからぬが、毎年3月1日になると公立高校の卒業式が執り行われる。例えそれが日曜日だとしてもだ。

 

てなわけで、我が家の坊主も昨日にて高校の卒業と相成った。6.3.3と12

年。4月からは晴れて社会人として羽ばたくことになる。

 

自らの高校の卒業式はかれこれ40年近く前のことになる。当時の内容も式次第も全く覚えてはいない。そこで、平日ならば叶わぬまでも、運良く休日の日曜日だということで、当時の雰囲気をわずかばかりでも味わってみようと式に参加してみることにした。

 

当初、嫁が学校まで坊主を車で送っていくと話をしていた。それを非難するわけでもなかったが、

「3年間、自転車で通った道のりを、最後にペダル漕ぐ毎に思い出として残してきたらどうだ?」

と話したところ、最初から決めていたかの様にそのつもりだったと話し先に自転車で家を出た。どうやら嫁の一方的なお節介だった様だ。

 

というわせで、後ほど時間を置いて嫁と一緒に式場へと向かうことになった。当然、2人で2台というわけにもいかず1台の車に便乗して向かったわけだが、車の中で2人きりになるということが、10年以上遡っても記憶に届かない。久しぶり過ぎて今更思い出そうとすることも面倒くさい。けして新鮮な気分には全くと言ってならなかったので、下衆な勘ぐりはよしなさいと今のうちに言っておく。

 

学校に着くとごそごそとカバンの中をあさりだし、

「マスクつけてよ。ちゃんと『マスクを着用して下さい』って書いてあったから」

計5枚マスクを手渡された。

 

「必要ない。俺、マスク苦手。というか何故5枚?」

「いや、普段も使うと思って」

「じゃ、今渡すなよ。帰ってから渡せよ」

 

昇降口で靴を脱ぐ。

「あっ!しまった。スリッパ忘れた!」

見ると周りの保護者は皆スリッパ持参で来ていた。

「あのさ、スリッパ忘れてマスクだけ大量に持ってきても仕方ないだろ。それともマスクを足に付けるか?」

「あはは、ホントやね。バカや、私」

どうやら自覚症状はある様だ。仕方がないので学校からスリッパを借りてきた。

 

式は予め知らされていた通り、来賓はPTA関係者のみ、在校生の参加はなしで質素に行われた。

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ほぼ男子校につき、全く色気のない卒業式だったが、卒業生退場の折に生徒達が自分たちで勝手に考えて決めたのだろう、先生や保護者席に向かい「3年間、ありがとうございました」との予期せぬパフォーマンスにはわずかながら胸にジーンと来るものがあった。

 

式の後は改めて担任より生徒一人ひとりに卒業証書が手渡される。

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どっちが手渡しているのかわからない


担任、学科主任が話す、社会人としての今後のあり方や、精神的な心構えなどの「送る言葉」に皆、身動ぎひとつせず耳を傾け覚悟を決めているかの様だった。

 

毎日、油断の出来ぬ日が続いてはいるが、天候にも恵まれ最高の卒業式が迎えられことに感謝したい。やっと開放された思いからか、先々の希望に満ちた思いからか、若しくは両方か、皆のはち切れんばかりの笑顔が見られたのは保護者のひとりとして万感の思いだった。

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