「男梅」170個分の幸せ
「お父さん、なんか届いたよ。なに、それ?」
学校が休みなのに遊びにも行けない。いよいよゲームも飽きてきた。よって暇を持て余す娘達にとって外から来るものに興味を惹かれようともやむを得ない。
「ん?なんだこれ?」
何かを買った覚えも無ければ、例えそれが贈り物だとしても見た目があまりに無粋すぎる。そもそも、誰かに贈り物をされる可くおめでたき事も無ければ他にそのいわれもない。
送り先は「出光昭和シェル『さぁ、でかけよう統合記念キャンベーン』」事務局となっている。娘達とさっそく開けてみる。というか、
「開けていい?」
と聞くや否や娘達が開けだした。
「なんか紙が入っとるよ」
「ちょっと見せて」
見ると『さぁ、でかけよう統合記念キャンベーン』ご当選の連絡と書いてある。
ここでやっと思い出した。以前、ガソリンを入れに行った時にその様なキャンペーンをやっていたことを。恐らく無意識のうちに応募していたのだろう。何せ朝なにを食べたかも忘れるほどここのところ物忘れが酷い。もう、ダメかもしれない。
「中の奴も開けていい?」
「いいよ」
紙には「記」としてこう書かれている。
■当選コース:レシートで応募:12月商品 3,000円コース
■商品名:Under Armour® True Wireless Flash - Engineered by JBL®
と書いてあった。日本語で書けよ。
「なにこれ?」
なんとなく、というかBluetoothイヤホンだった。
「イヤホンだな。これは走る時に便利でいいや。ちょっと嬉しいかも」
今はiPhone純正のひも付きイヤホンを使っている。別にそれに文句があるわけではないが、たま~に走りの邪魔をすることがあるのでBluetoothイヤホンが羨ましいとは思っていた。ただ買うまでの不便さを感じることは無かったのが、只で頂けるのであればちょっと嬉しい。
イヤホンと聞いたとたんに娘達の興味が失せる。ゲーム器、若しくはゲームソフトでも期待していたらしい。なにを根拠に期待していたのかはわからないものの、何となく気持ちはわかる様な気がする。学校が通常通り運営されていれば無駄な妄想も広がることは無かっただろう。
いったい幾らくらいするんだろ、と興味がわきちょっとググってみた。
「ふぅ~ん、17,880円か…。ん?えっ!
17,880円!!マジで?!」
横で聞いていた次女も驚いた。
「こんなちっちゃい奴がそんなにするの?なんかおかしくね?男梅170個も買えるやん」
ソロバンを習っているだけあって計算が早い。というか、何でもかんでも男梅で例えるのはやめなさい。
ちょっと嬉しいから超嬉しいにグレードアップしたのは言うまでもない。今のところ我が人生に於いて最高額の当選結果と報告させて頂くこととする。後にも先にもこの一回こっきりだけどね。