氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

数ミリリットルを巡る攻防「その先へ行け」

「その先を見たいと思わないかい?」

 

耳元で何者かが囁く。FUELメーターはまだ振り切れていなかった。が残り1kmを表示した2分後にその先がやってくることになる。

 

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「LoFUEL」

 

初めて目にする言葉だ。ただ、まだ「empty」には成りきっていないのか、エンジンは動き続けている。

 

この俺を試しているのだろうか?どうせお前になど我慢出来るわけがない、などと蔑んでいるのか。いずれにしても人を小馬鹿にしている。

 

「よし、やってやろうじゃないか」

 

これはもはや頭脳ゲームとは言い難い、自らの精神力のみを駆使したゲームと言えるだろう。ガスタンクが精根尽き果てゲームオーバーとなるか、または精神的に耐えられず途中でGSに寄ってしまうか、結果そのどちらになったとしてもゲームは終わる。すなわち負けを認めざるを得ない。

 

職場からの帰り道沿いにあるGSまではまだ8kmの距離がある。残り8kmを巡る攻防が展開することとなった。

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アイドリングストップなどという小洒落たシステムは搭載されていない。タコメーターも不必要な荷物をただ運ぶ箱、いわゆる商用車だ。ただ商用車としても今時の車には珍しくマニュアル操作ゆえ、トラクションのコントロールは自らの経験と勘に頼ることとなる。これは燃費をコントロールする上で若干の武器にはなろう。

 

交差点では赤信号の度にエンジンを切る。端からみたら環境に気を使ったエコロジストの鏡と写ったことだろう。大きなトラックを見つければ、その後ろにピッタリと付く。いわゆる「テール・トゥー・ノーズ」だ。前のトラックのお陰で空気抵抗が減りスリップストリームが発生する。一見、あおり運転にも見えるが、今はその様な他人の思惑などどうでも良いのだ。ただ通報だけはされないことを祈っていた。

 

目標とするGSまであと500m、400m、300m200m…

 

もはや軽々と目視出来るところまでやって来た。ここまで来れば例えエンジンがいまわのきわに「プスン」と鳴こうがなんとかなる。そのまま勢いをつけてGSに飛び込み見事ゴールラインを割ってみせた。

 

「エイドリアーン!!」

 

そしていつもの様に「水曜日限定50リットル以上給油でティッシュ2箱プレゼント」を受け取って帰宅の途についた。

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給油は水曜日にしかしないと心に決めている。

fish-on-ice.hatenablog.jp

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