氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

米びつでこの俺様を篭絡させるつもりか?

以前の同僚がうどん居酒屋を立ち上げたので陣中見舞いと訪ねたら、偶然にも前職の時に散々、世話をしてやった米屋がそこにいた。


「あ、どうも、ご無沙汰しております。元気ですか?」

「見てわからんのか?」

「あ~ははは、お元気そうで何よりです」


そこからは自分の店の話になった。

「お米、どうされます?」

「あぁ、それほど使う事もないだろうから、そこらのスーパーで買ってくるよ」

「そんなこと言わずにお願いしますよ」

「まぁ、そうだな。だったら一度店に顔を出せ」

と、具体的な日付のアポもないままその場でわかれた。


そして昨日のこと。ホームセンターで必要な備品の買い出しをする為に入店しようとしたら電話が鳴った。件の米屋からだ。


「あと30分ほどで着きますがいらっしゃいますか?」

ここからは心の声だ。

「いらっしゃいますか?じゃねぇだろ。俺は午前中からいつ来るのか、今来るのかと首を長くして待ってたんだぞ。せめて午前中に電話をよこして『何時ごろご都合がよろしいでしょうか?』と尋ねて来たらどうなんだ?」


実際は

「今からホームセンターで買い物だから40分後くらいかな?」

「じゃ、先に行って待ってます」


店に到着したら既に営業用ハイエースが止まっていた。

「で?何の用事?」

「いやいやいや、米をお持ちしたんですよ」

「俺、買うなんて言ってねぇじゃん」

「そんなこと言わずに。米櫃もこうしてお持ちいたしましたから」

「お前、米櫃で買収するのか?」

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よほどキリンビールは50万円のサーバー、お前のところはたかが米櫃ひとつかよ、と言ってやろうかと思ったが、健気にも新品の米櫃を担いで来たので許してやることにした。


「これからも末永くよろしくお願いします」

「だったら、店がつぶれねぇように沢山、金を落としていけよ。日曜日、待ってるからな」

「あ、日曜日は定休日ですので」

「だから来いって言ってんじゃねぇか。誰も営業に来いなんて言ってねぇよ」

「あ~、はい。そうですね。行きます、行きます」


絶対に来ねぇぞ、こいつ。

 

 

 

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