氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

知られすぎた秘密

つい先日まで勤めていた会社の同僚から

「飲みにいきませんか?」

とLINEがあった。


思うところあって

「サシ飲みだよな?」

と返してみた。


怪しい。実に怪しい。会社を辞めるタイミングでお誘いがあるだなんて何か画策しているに違いない。


ところが白々しくも

「誰かさそうんですか?」

と返事があった。一応、信じたふりをしてみる事にしよう。そこで、自分が行きたい場所を指定すると、

「予約取っちゃいました」

だと。なぜ、野郎2人で飲みに行くのに予約する必要があるんだよ。


ビール会社の担当者と会うことがあったので尋ねてみた。

「そういえばさ、今度、◯◯と一緒に飲みに行くことになったんだけど、自分もどう?」

「あ、はい。承知してます。お邪魔させて頂きます」

「えっ?なぜ知ってるの?」

「あ、しまった!」

ほらね。やっぱりそういう事か。


朝、市場に顔を出すと、魚屋の番頭さんから

「そういえば、昨日△△が来たよ」

と聞かされる。△△とは、以前、一緒に働いていた、今では独立して小料理屋の女将をやっている女性だ。


「もうすぐ退職するから送別会をやるとかどうとか言ってたよ」

なるほど。そういえば△△の店も◯◯の休みと同じ日だ。おまけに2人は同中で男女の垣根を超えた親友だ。


となると、こりゃ中々帰してはくれなさそうだ。最終バスが10時35分ではちょっと早すぎる。車だと駐車料金に代行代金がかかってしまう。泊まった方が安上がりだ。のろまな行政がいつまで経っても県民割を発表しないもんだから仕方なしにBooking.comで安宿を検索。3,300円の宿がアプリから予約すると2,871円になっていた。タクシーよりも代行よりも格段に安い。晴れたらカブ、雨だったらバスで行けばいい。


予約した店に行くと案の定、関係各社の代表を含め大勢が待ち受け、盛大に送別会を催してくれた。実は送別会とかこういうのは苦手なんだよね。静かにフェードアウトするつもりだったんだけど、そうは問屋が卸してくれなかった。とはいえ、花束なんかも貰っちゃって幸せの極みだよね。


でも、晴れてくれてよかったよ。雨だったら花束を持ってバスに乗らなきゃならなくなるところだった。ま、カブに花束もちょっと恥ずかしかったけど。

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