氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

すっぽんの底力を見よっ!

夜中に帰宅すると玄関先に2つの「すっぽん」が並んで立っていた。

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正式名称は「ラバーカップ」というらしい。が、そんなことはどうでもよく、いつ誰が訪ねてくるかも知れない玄関先に、こんな不浄な物を置きっ放しにしておくとはどういう了見だ!と憤ったものの深夜ゆえ皆、就寝中だ。結局、怒りの矛先を見つけられぬまま仕方がないので自らが撤去することになった。

 

翌日になり、仕入れから帰宅すると開口一番、

「あんなものを玄関先に置いておくな」

と半ばキレ気味に叱責すると、

「私じゃない!」

と反論するも、置いてあったことは知っていた様だ。そして犯人は坊主だという。知っていて放置していたのならば同罪じゃね?まぁ、揉め事に発展するのも面倒なのでそれ以降は口を閉ざした。ただ、坊主には確認せねばならない。

 

「お前なぁ、何に使ったかは知らんがあんなものを玄関に置きっぱなしにしておくなよ」

「は?なにを?」

「トイレのすっぽん」

「あ、あぁ。車の凹みを直すのに使った」

「あぁ、あれか!」

 

信号待ちの交差点で乗っていたスーパーカブごとぶっ倒れてしまうほどの熱中症に罹患することを特技とするとある整骨院のマスターに以前、聞いたことがあるテクニックだ。トイレのすっぽんを当て吸引させ、その後、思いっきり引っ張るとある程度は元に戻るらしい。

 

「熱湯を掛けてから引っ張ったら『バコンッ』って戻ったわ。まぁ、細かいところは無理だけど、大まかな見栄えを取り戻すくらいにはなった」

「ただ、元からあった奴では吸引力が弱くて無理だった」

「だから新しいのを買ってきた」

ということだ。そりゃそうだ。いつから我が家にあったものだろう。数々のピンチを救ってくれた歴戦の勇士だ。それこそ◯◯◯にまみれて活躍をしてくれたものだが、今では既に退役軍人となり穏やかにその余生を過ごしていた。それがいきなり戦場に駆り出されたとしてももはや使い物になるわけがない。

 

「そりゃ、新しい方がいいに決まってるだろ。というか、車に使ったものをそのままトイレにってのはまぁ、わかるけど、おまえ、トイレに使ってた奴だぞ。それを車に使うってちょっとした勇気が必要じゃね?」

「あ、なんも考えてなかった」

 

「ま、うんを味方につけたってことで」

と無理やり話にオチをつけておいてあげた。お後がよろしいようで。

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