奈良で夜遊び♡@「味どころ やまと屋」
ホテルのラウンジでアルコールのフリードリンクを楽しんでいたら、
「そろそろお出かけの時刻よ♡」
と若い彼女達が耳元どころか耳を引っ張って声を荒げた。先のセリフはあくまでも理想を述べたに過ぎない。実際には
「何をいつまでもダラダラと飲んどるんじゃい!」
だった。要するに腹が減ったから早く飯に連れて行けと。
仕方がない。既にいい感じにほろ酔いだったが、取り敢えず駅前をぶらつき良さげな店を探そうではアルカイダもとい、あるまいか。
ところがだ、思いの外、JR奈良駅の界隈には居酒屋を始め料理を提供している店が少ない。約4~500店舗がひしめく岐阜駅前の様相をここ奈良駅前にも想像していただけに意外だった。とはいえ、こんな機会も滅多に無い。観光気分で徘徊してみよう。なんて思っていたらいきなり雨が降り出した。いかん!いかんぞ!風呂上がりで髪型をセットしたばかりだ。取り敢えずここでいい!ここに入ろう!と3人が衝動的に飛び込んだ店は「味どころ やまと屋」という、如何にも奈良チックなネーミングの店だった。
「いらっしゃい」
関西訛りのお出向かえは着物に身を包んだ女将さんだった。マスクを取ったらどうなるかはわからないが、目元だけで判断するにかなりの美人だ。恐らくカウンター内にいる黒髪でオールバックの男性が大将だろう。此方を一瞥するとニコリともせず手元に目を落とした。
「すみません。この子たちにはオレンジジュース。自分は…、大ジョッキってあります?」
「はい、ありますよ」
店内を見渡すと、壁に「メガ仏ジョッキあります」と書いてある。どうやらそれが大ジョッキらしい。
「さぁてっと。なにを頂くかな?」
メニューを見る。達筆過ぎて読めない。加えてメニュー数が多すぎる。
どれがメインでどれがおすすめのメニューなのかもわからない。壁にもいっぱい貼ってあるしホルダーに挟んでオンテーブルもされている。
ま、いいや。お前ら好きなものを頼め。
自分はろくに食べもせず、大ジョッキの後は地酒を3合いただき二度と人間になれないベムベラベロベロベロベロになってしまった。
しかしながら料理は何を食べてもかなり美味い。全てがハイレベルだ。「鱧の照り焼き」が余りにも美味かった。
「ここは昭和歌謡ばかりが掛かるんですね」
店内には耳馴染みのある昭和歌謡ばかりが流れていたので、自分も一緒になって歌っていたら次女に窘められた。
「恥ずかしいからやめて!」
「ご主人はお幾つですか?」
口が無いものと思われていた大将が初めて口を開いた。
「昭和38年生まれです」
「じゃ、僕らと一つ違いですね。僕も家内も39年生まれです」
え?嘘?見た目があまりにも若すぎる。これには次女も驚いていた。
「髪の毛真っ黒やしフッサフサやね」
「うるさいゎ(涙)」
それはさておき偶然、飛び込んだ店だったが大ヒットだった。何を注文してもお値打ちだし、オマケに美味すぎる。奈良に再び来る機会があるならば再訪は確実だろう。
店を出るころには雨も上がっていた。ホテルに戻るとまだ午後9時前だったので、ラウンジでひとりワインを頂く。
その後の記憶がまったくない。