「柚子シロップ」よ何処に…
「柚子シロップ」を求め旅に出る。スタッフに買い出しを頼んだところ、
「『業務スーパー』にも『アミカ』にも売っていませんでした」
との答え。
「ひょっとしたら『リカーマウンテン』にあるかも知れません」
ということだったので、不肖わたくしめが行って参った。
「リカマン」ってどこだっけ?
うろ覚えで車を走らす。自慢ではないが極度の方向音痴だ。だいたいの位置は把握出来ているものの、明確には把握出来ておらず勘だけが頼りだ。だったらナビを使えばいいじゃんと誰もが思うところだろう。確かにあなたの言う通りだ。が、しかし、いわば目と鼻とも言える距離にあると言っても過言はない「リカマン」くんだりに、男子たるものナビを頼る事などあってはならずだ。
「リカマン」かと思いつつ、到着した先は何故か「西友」だった。いつも仕事帰りに寄る「西友」は長良川を挟んで川北にあるが、此方は川南の「西友」でオマケに岐阜ではセレブレティな場所にある。川北の「西友」は24時間営業であるにも関わらず、川南の「西友」は午後10時に終わってしまう。このことからも分かる様に、川南には中流階級以上のホワイトカラーや支配者層が多く住み、川北にはいわゆるブルーカラーと呼ばれる24時間使役されている労働者階級のみが生息するという住み分けによるカースト制度が敷かれている。それが岐阜市だ。
「リカマン」にあるのならば、ひょっとしたら「西友」にだって「柚子シロップ」があるかも知れない。がしかし、期待に胸を爆乳させ狙いを定めた棚に直行するも、レモンやライムはあれど肝心の「柚子シロップ」を探し当てることは出来なかった。どうやら無駄足だった様だ。
立秋を過ぎ、店内もあちらこちらに秋の様相をあしらっている。ふと弁当のコーナーを見ると「秋の味覚はじめました!」とあり「カキフライ弁当」が売られている。
さすがにまだカキフライは早いだろう、と思いつつも手に取り季節の先取りもいいか、と思い立った。
弁当を手に取りレジに並ぶ。此方の「西友」は会計に至るまで未だ人的レジだ。セレブな「西友」だけに人との距離感が大事と考えているのだろう。因みに川北の「西友」は既に自動支払機が導入されている。カード処理もセルフで可能だ。故に手をキュッと握られて釣り銭を返されるという期待感はうちのめされる。
昼飯抜きで自宅を出てきたので、ひとまず腹ごしらえでもしましょうか。そこで店に戻ると買ってきた「山賊揚げ弁当」をレンチンする。
え?「カキフライ弁当」じゃねぇのかよ、って?いや、さすがに「カキフライ」はまだ早いでしょ。それに「先取りもいいか」と思い立っただけで買うとは言ってないし。
して、肝心の「山賊揚げ弁当」は思いの外、淡白な味付けで思ったよりもヘルシー感が漂うものであったが、特筆すべきは白ごはんの美味さだ。もちもちとした歯ごたえで味わいよく、この白ごはんで丼飯が3杯は行けそうな程、美味かった。
「柚子シロップありました?」
「いや、無かったよ」
「そうですか。『リカマン』に無いとなればどこで買えるんでしょうね」
「だよな」