氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

坊主グッジョブ(´∀`)bグッ

ひょんなことから歯医者の予約が入っていたことを思い出した。先週は上の歯。今週は下の歯の掃除だ。一度で上下済ませないのは報酬の釣り上げなのだろう、と勝手に解釈している。とはいえさほど気になることでもない。

 

受付を済ませると先ずは検温だ。

「36度1分です」

見事に1次予選突破だ。

 

「此方におかけ下さい」

マイハニーの姿が見られない。どうやら不在の様だ。くどいようだが見た目がプーさんだから勝手にハニーと呼ばせてもらっているだけなので念の為。代わりのお相手は自分が一番苦手とするタイプだ。マスク越しでもひと目で美人とわかる。「キレイ」ではなく「美人」なのだ。苦手な相手には普段、寡黙な自分もついつい饒舌となってしまう。

 

「なんか、うちの坊主も来ているらしいね」

「あれ?ご存知なかったんですか?」

 

つい先日のこと。外からブツブツと文句が聞こえて来たので耳を済ませるとどうやら宅の坊主らしい。

「なんじゃ、これは。鬱陶しい」

などという言葉が聞こえてきた。その後、自転車のスタンドを跳ね上げる音が聞こえると、ガチャガチャと音を立て出ていった。

 

車を運転しだしてからというもの、多少の用事はすべて車で済ませてしまっている。今更、何の用事があって自転車?奴が通学に使っていた自転車はカゴが2つ付いていたので、ありがたくゴミ箱代わり、若しくは家庭で不必要なものをインさせてもらっていた。それが気に入らずブツブツと言っていたかと思われる。

 

休みの日に顔を合わせたついでに訊いてみた。

「この間、自転車でどこに行ってきたんや?」

「あ”?歯医者」

「え?歯医者って…、なんでわざわざ自転車で?」

奴の掛かりつけの歯医者は自宅から4kmばかり離れている。何故に今回に限って自転車で行った?

 

「歯医者変えた。近い方が楽やで」

どうやらそいういうことだったらしい。

 

「うん、全然ご存じなかったよ」

「てっきりご主人にご紹介して頂いたとばかり思ってました」

たとえ息子であろうがライバルは少ない方がいい。

 

「息子さんのお名前、回文になっているんですね」

「お?気づかれました?上から読んでも下から読んでも同じ名前なので自己紹介しやすいんですよ。小学校の宿題に『名前の由来を聞く』ってのがあるでしょ。でね、ただのジョークで付けた名前だったのでめっちゃ困っちゃって、出任せに『裏表のない人間になって欲しい』ってことにしておいたわけ」

「へぇ~、咄嗟に考えた割にはまともな由来ですね」

坊主のお陰で思わず会話が弾むこととなった。たまには奴も役に立つことがある。

 

「これで一旦、終わりです。次回は11月5日の金曜日ですね」

「さ、3ヶ月も間が空いちゃうんですか?」

「そうですね」

 

いや、そこは此方の真意を汲み取って「寂しいですね」とか「我慢します」とか言ってくれてもいいんだよ。ただ、どうにもしてあげられないのは残念だけど。

 

銀歯も白い歯に出来る技術にしばし見入ってしまった。

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