決意表明
「おれ、もうランニングやめるよ」
「えっ?なんでですか?」
早朝の市場でランニング仲間でもある同業者、通称「おしゃべりメガネ」に出くわした。仲間というよりもむしろ弟子といった間柄でもある。
「いや、もうこれからの世の中、ランニングなんてのは時代遅れだろ。これからはスケボーだぜ。おれ、スケボーを始めることにするよ」
「それ、日本人選手が金メダルを取ったからその気にさせられただけでしょ?」
「何を言う、早見優~。こう見えても中2の頃にはわざわざ柳ヶ瀬まで出てきて繁華街をスケボーで流したもんだぜ」
そう、初めてスケートボードというものの存在を知ったのは遡ること44年前になる。確かファッション雑誌のメンズクラブでその存在を知ったかと記憶している。さっそく買い求めに走るも、岐阜の様な田舎では当然、そんなものはまだ売られてもおらず最初の1台はスポーツ用品店でのお取り寄せとなった。
その後、映画「ボーイズ・ボーイズ」を観てスケボーで街乗りする姿に憧れわざわざ川北から自転車にのって川南にまで進出し、挙げ句の果て「金(こがね)公園」を練習の場にしていたら補導員に2度も補導された。スケボーはヤンキーがやるスポーツとしての悪いイメージを払拭したい、と言ったのは、今回、金メダルをとった四十住さくらだが、どうやら当時からそんなイメージでとらえられていたらしい。てゆーか、スケボーの存在そのものを知らなかった可能性の方が大きい。
しかし、「ヤンキーがやるスポーツ」って…。そもそも日本のヤンキーはスポーツやらんやろうと思う。それにビバップハイスクールみたいな連中がスケボーやってたらインパクトこそはあるものの絶対に似合わんと思う。
というわけで、ことスケボー界に於いてはある意味ストリートの魁ともいえる存在なのだ。日本中がもっと敬ったらどうなんだ。
といった趣旨のことを延々と話すも心ここにあらずの様相だったので、
「どうかしたのか?」
と聞けば数日前より帯状疱疹を患っているのだとか。で、頭痛が酷く上半身の神経痛で悩まされているとか。
たかが神経痛如きでこの俺様が語る遠大な夢物語に貸す耳が無いと言うのか?失礼な奴だな。もういい。もしこの先、オレが有名になっても「あれ、オレの知り合い」なんてことを口が裂けてもぬかすんじゃねぇぞ。取り敢えず次の休みにでもスケボーを見に行ってこようかと思う。「ヒマラヤ」にあるかしゃん?