氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

あたりめにマヨネーズ

深夜に帰宅しシャワーを浴びる。上半身裸のまま冷蔵庫に向かい冷えた缶チューハイを手にすると、自室にもどりPCの前に腰を落とす。

 

ふと気がつき時計に目をやると既に午前3時を過ぎていた。どうやら椅子に座り缶チューハイに口を付けた途端に寝落ちしてしまったようだ。開栓されたもののほぼ手つかずのままぬるくなってしまった缶チューハイがそこにあった。

 

あわてて名古屋向けの発注を済ませ布団に入る。カエルの大合唱が耳をつんざき寝転がるにも左上半身の神経痛が邪魔をしベストなポジションがなかなか得られなかった。が、その後の記憶がないまま5時のアラームで再び起こされる。身支度を整え市場へ向かった。

 

仕入れを済ませ各店に納品へと向かう。車のラジオからパバロッティが歌うプッチーニの名曲、トゥーランドットから「誰も寝てはならぬ」が滔々と流れてきた。応援されているというよりも、隷属を強いられている気がした。

 

身体も脳みそも打ちのめされているというのに、またしても歯医者へ行かされる羽目となった。朝っぱらから昨晩の夕食の残りものをつつきながら「あ~、ビールが飲みてぇ」などと思っていた矢先の出来事だ。その残りものの真鯛の兜焼きをほじくりながら、目玉の周りのコラーゲンをしこたま堪能し、最後に残った目玉の核を噛み砕こうとした時に事件は起こった。

 

バキッ!と鈍い音が脳幹に鳴り響きその瞬間、全てを悟ることとなった。またしても奥歯に当たる義歯が崩壊したのだった。体調不良を抱えた上に寝る間すらほぼ無いにも関わらず、またしても厄介事に見舞われてしまった。弱り目に祟り目、あたりめにマヨネーズだ。ただ、これが朝の出来事でまだよかった。前日の整形外科に同じくノーアポで掛かりつけの歯科医院へと向かった。

 

「これ、もう作り直しを検討された方が良いですよ」

義歯、即ち部分入れ歯のことだが、保険適用のものだとこれからも何度となく同じことが起こり得るだろうと予言された。それはひとえに自分の「噛み締めグセ」が悪影響を及ぼしているとのこと。確かに無意識のうちに歯を噛み締めていることがある。アスリート特有のクセともいえるだろう。

 

「金属床のものならばその点、壊れることがないので安心ですけどね」

「それ幾らするって言ってましたっけ?」

「23万。大きかろうが小さかろうが部分だろうが総入れ歯だろうが同じ金額がかかります。手間は一緒ですからね」

「じゃ、総入れ歯の方がお得ですね」

「不便さを除けばそういうことになりますけど、そんな風に考えたことは一度もありません」

褒められたのか?

 

「本当はあなたみたいな人はインプラントにした方がいいんですけどね」

「でもインプラントって高いでしょ?」

「それこそ1本で20万くらいするんやないですか」

 

新しく作るにしても直ぐにできるものんではないので、取り敢えず壊れたものを直してもらうことにした。その後のことはじっくりと時間をかけて決めたいと思う。が、また崩壊するまで決めあぐねることだろう。

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