氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

大きなエクボの~秘密あげたいわ~♫

車にネコをぶつけられた同日。自宅にもどりクタッとしていると、家電がなる。「かでん」じゃないよ、「いえでん」だよ。すると電話をとった次女が離れの部屋にいる自分の方を目掛けパタパタと走ってきた。

 

「お父さん、お兄ちゃんから」

は?どうした?しかも何故に家電?「いえでん」です。

 

「どうした?」

「車ぶつけられた」

「マジで?どこで?」

「床屋の前」

恐らく自宅から最寄りの床屋かと思われる。

 

「ぶつけられたのかぶつけたのか?」

「ぶつけられた…でいいと思う」

「よし、今から行くゎ」

というわけで急遽駆けつけた。

 

場所はT字路。坊主の車の他に左前部分が損傷した軽自動車が止まっていた。坊主は直進、右から軽自動車が坊主の横っ腹に突っ込んだといった形だ。

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つまり「ぶつけられた」が正解だろう。警察は既に呼んだ後だということだったので、自分の出番はもはや無さそうだ。とはいえ、まだ未成年なので車の名義は自分だし保険も自分の名前で掛けてある。一応、保険会社には連絡を入れておいた。

 

お相手は年の頃ならば25~6の見栄えが良い好青年。身長は180cmの坊主と同じくらいだろうか?作業服に身を包んでいる。胸に会社名が刺繍されていた。その会社名が、ははは。先日、我が家に飛び込みで屋根修理の営業に来た会社じゃないの。見積もりは我が家の経済事情では余りにも高すぎたが、けっこうまともな会社だったことを後に知ることとなった。敢えてそのネタに触れることはなかったけどね。

 

「会社に遅れる旨を電話しておいた方がいいんじゃね?」

「あ”、あぁ、そうやね」

普段、自宅ではあまり口を開かない坊主だ。会社ではどういった言葉遣いをしているのかが気になり聞き耳を立ててみた。

 

「おつかれさまです。◎△$♪×¥●&%#?!」

聞いていて驚いた。ビジネス用語も間に挟んでえらく普通に話せてるじゃん。へぇ~、社会人も2年目となればこんな流暢に会話出来る様になるんだな。息子の成長ぶりがうかがえた瞬間だった。

 

後に保険屋から電話が掛かってくる。

「双方から話を聞き状況を鑑みたところ、過失割合は30:70の基本状況であると考えます。これは日弁連から発行された書籍をベースとして判例に基づき決定されます」

と説明を受けた。

 

ま、そんなところだろう。

「それがですね、該当車はお父様の名義でお父様が保険を掛けられてますね。もし保険を利用されるということでしたら今までの等級が3等級さがりまして、保険料が3年間で約27万円ほどお高くなりますが如何いたしましょう?」

「ちょっと考えます」

これには即答を避けた。なぜ坊主の事故で自分が辛い思いをせねばならんのだ。

 

取り敢えず、車は動くのだから誕生日の10月までそのまま我慢して乗れ。あとは修理するなり買い換えるなり好きにしろ。二十歳になれば自分名義で保険に入ることが出来る。そこから先は好きにしろ、とLINEで送っておいたが未だに既読がつかない。どーなってんの?

 

なにはともあれ親子揃って災難な日だった。

 

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