氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

ある意味、床屋にも入場料が必要という解釈

目覚めた瞬間、「今日はどこにも行かないでおこう」と心に誓った。ただ、長女の通学のお供は別だ。通学の時刻になり居間にいる筈の長女を呼びに行くと、そこはもぬけの殻だった。ということはだ、既に自宅を出た後だと思われる。更に推測の幅を広げると、きっと同伴者は別にいる筈だ。一体誰なんだ?考えるまでもなく娘たちの母親だ。

 

「はぁ…」

とひとつ深い溜息をつくと、誰もいない内にと自宅を出ることにした。天気予報からてっきり雨だとばかり思っていたら、日差しさえ注ぎどうやらその兆候もなさそうだ。取り敢えず愛車のカブリエーラにまたがりエンジンをかける。この時点で冒頭の誓いは頓挫した。だって、まさかアレの仕事が休みだなんて思ってなかったんだもん。

 

「そうだ、髪を切りに行こう」

そろそろ、そんな時期だ。カラッとした季節はもはやこれまで。いよいよ高温多湿な日本らしい気候が訪れる頃だろう、と勝手に想像しそれまでにスッキリとしておこうと思い立ったわけだ。髪の毛がある者の宿命で、湿度が高くなるにつれ髪の毛にどうにも落ち着きがなくなるのだ。加齢が原因だといわれる。近年、髪にウェーブが掛かりだし、梅雨時はそれが尚更顕著にあらわれる。この時ばかりは髪の無い人が実に羨ましい。一応、言っておくが本心だから。けしてそういう方々を揶揄しているわけではないので念の為。

 

いや、ここは本心ではなく冗談にしておいた方がいいのか?

 

取り敢えずいつもの床屋に向かいバイクをとめてふと気がつく。

「あ、マスク忘れた」

 

本当に面倒くさい世の中になってしまったものだ。マスクひとつで入店拒否、その挙げ句事件にまで及ぶという話がここ最近のニュースでも目につく。常連なのでそこは「マスク忘れちゃった、ははは」と笑ってごまかすことも出来ないことはないとも考えたのだが、ただお客は自分のみではない。となれば自分ひとりの所為で店に迷惑をかけるということも考えられるというわけだ。致し方なし。近くのコンビニまで行き購入することにした。

 

マスクをせずに行けばコンビニにもきっと嫌がられるだろうと思いつつ、店に入ると同時に店頭に並んでいるマスクが目に入った。自分の様なこういった客もいるだろうという配慮の配置だったのかも知れない。知らんけど。

 

しっかりマスクを口にかけ、満を持して床屋に入店すると

「すぐ出来ますのでどうぞお掛け下さい」

と席に案内された。床屋だから当然、マスクは外す。結果、マスクの出番は入店時と退店時の合わせて20秒だけだった。

 

「ん~、買わんでもよかったんちゃうかな~」

とは思ったものの、季節に先んじた買い物ということでこれはこれできっと活躍することだろう。というかマスクが活躍する世の中では駄目なんだけどね。

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