氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

大根にまつわるエトセトラ

市場の仕入れ先は大きく分けて二手あり、いわゆる「場内」と「場外」がある。共に仲買であるには変わりないのだが、簡単に言えば内か外のどちらに家賃を払っているかの違いだけだ。ただ元請けは当然、内に有るわけだから仲買にとっても利便性は良い筈だし、外に点在するよりも内にギュッと濃縮されていた方が自分の様な仕入れ人にとっても彼方此方に行く必要もなく、となれば当然のこと利便性が良いわけだ。

 

ただ一軒だけ場外にも約20年に渡り付き合いのある八百屋が存在する。80をとうに超えた老夫婦で営んでいるのだが、付き合い始めは当然まだ60代のピッチピチだった頃だ。何か変だがまぁいい。

 

此処との付き合いは当時まだ此処にしか取り扱いのなかった枝豆との出会いだった。岐阜市は良質な枝豆の有数な生産地でもあるが、中でも長良川流域にある「島地区」の枝豆が有名だ。この八百屋はその島地区の枝豆農家と直に取引をしており、その枝豆を分けて貰っているわけだ。

 

たださすがに齢も80を超えると身体能力以外にも色々と心配なところが出て来だした。

 

先日、頂いた大根が見た目にはセンセーショナルだが食材としては使える状況でなかったのでその事を伝えて返金を願いでた。

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写真を証拠として

「昨日の大根、こんなでした」

と見せた。

「こりゃあかんね。昨日、幾らって言っとったかね?」

「150円でした」

「あ、そうか。ほんなら180円にしとくゎ」

「えっ?何故値上がり?」

 

それに例え値下げをしてもらったところで使えないものは使えない。まるでコントの様なやりとりをしていると、

「お父さん、なに言っとるの。違うよ。昨日、150円で売ったやつやがね」

すかさずお母さんから合いの手が入る。お母さんは身体に不自由があるが頭の中身はしっかりとしている。

 

「そやったか。ははは、こりゃもう年取ってどうにもならんわ。ほんならお金返さなあかん。母さん、お金返しておいて」

「まだお金貰ってないでしょう。伝票付けたの消しておけばいいんやて」

ずーっと以前から支払いは一週間毎にまとめて済ませている。とまぁ、この様なやりとりが日常茶飯事に繰り返されるわけだ。

 

頼んでもいない物が伝票に付けられていた事も多々あるし、前日購入した大根と同梱されていた大根が翌日には値上がりしていた事もある。その都度、お母さんから後ほど電話があり価格の訂正がされたりもする。

 

その逆にあまりにも相場より安く提供された事もあったので、馬鹿正直にも此方から確認を促す事もあった。本当にしっかりしてよ、と実の父親が如く心配してしまう。

 

と様々なことが多々あったりもするが、自分はいつまでもお二人の味方なので末永く元気に頑張っていって欲しいといったエールの様なそうでもない様なお話だった。

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