氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

保険で受難の日

市場の仕入れから帰宅して、トイレで諸事情を済ませてからさて走りに出ようと思ったら、上下黒ずくめにタイトスカートの女が自宅玄関に向けて歩いてくるのが窓外に見えた。

 

なんだ?なんの用事だ?喪中でもなし、葬儀の予定も葬儀屋の御用も今のところお呼びでないぞ。

 

「おい、誰か来たぞ」

と嫁に言うと

「知っとる」

 

マニュライフ生命保険の外交員らしい。あのなぁ、自分は休みだから良いだろうけど、よりによってオレの憩いの時刻に呼ぶなよな。オレが出掛けてからでもいいじゃねぇの。

 

オマケにこれが玄関先に居座っていつまで経っても動きやがらねぇ。よほど咳払いでもして追い払ってやろうかとも思ったが、ほら、以前からもちょくちょくとお伝えしている通り頭の中ではありったけの罵詈雑言を思い浮かべてもそれを表に出す勇気はこれっぽちも無いの。

 

結局、1時間以上も居やがった。

 

「あのさ、わざわざオレが居る時に呼び寄せる必要はねぇだろ。トイレにも行けねぇだろが」

「行けばいいじゃん」

 

我が家のトイレは玄関からドアが丸見えの場所にある。

「行けすか!」

小ならともかく大ともなれば尚更だ。

 

よしんばそれを我慢して走りに出るとする。ランニングウェアに身を包み「ちょっと邪魔!」と言わんばかりに瞬時にランシューに履き替えるならばまだスマートだ。だが、ご存知な様にミーのランニングギアはワラーチだ。ただ履くだけならば良いのだが、紐の長さ調節等々、微妙な調整が必要になる事から意外と手間が掛かるのだ。話を中断させている間に2人の視線に耐えながらそれをやり続ける精神的苦痛に耐え切れない。

 

結局、時間を大幅にオーバーしてやっと走りに出られた。あちらこちらで桜もちらちらと咲き始めランニングにも目の保養が付帯し楽しみが増す季節到来だ。

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てかめっちゃくちゃ雨降ってきたし!1時間、早く走りに行けたならば雨に降られることもなく走ることが出来たと考えると余計に腹が立ってきた。帰宅する頃にはすっかりと水もしたたるイイ男。ぐっちょぐちょになりながら玄関にたどり着くと何故か嫁が玄関で待ち構えている。

 

「走ってきたの?馬鹿じゃないの、この雨の中」

あのなぁ…。

言い返す気力も失った。待ち構えていたかと思えばどうやら長女と一緒にお出かけをするところだったらしい。

 

自宅に入り鍵をかけ、びしゃびしゃになった服を上から1枚2枚と剥がすように脱いでいると、呼び鈴がピンポーンとなった。

「ったく誰だよ、こんな時に…」

自分はといえばほぼすっぽんポンだ。

「はい?」

と無愛想に返事をすると、

「あ、お忙しいところ恐れ入ります。第一生命と申しますが…」

 

おまけ

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