氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

草鞋はお守りになり得るか

市場が休みの水曜日、溜まったビン・カンを袋に入れ集積場へと持っていく。全て自分が排出したものだから自分でやらざるを得ない。それが我が家の掟だ。その頃になると宅の坊主も出勤時刻となる。いつもの事ながら、車のエグゾーストノートを巻き散らかしながら慌ただしく出ていった。

 

次女が学校へ行くのを見届けると、自室にもどりPCの電源を入れる。長女は昨日に引き続き就寝中だ。

 

You Tubeで冴えない地元中年男性の日常を描いたなんの変哲もない動画をボーッと観ていた。ついこの間まではチャンネル登録者数が自分だけだったのが、いつの間にか300人を超えているじゃないですか。がんばれ!1000人まであとほんの少しだ!月収5,000円も夢じゃない!とリアルに知り合いだけにエールを飛ばしたところで卓上のiPhoneがけたたましく鳴った。

 

画面を見ると「菅総理大臣」と出ている。

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「もしもし」

「あのさぁ、家の鍵知らん?いつものところに無いんやて」

「はぁ?知らんけど、ちょっとそっちへ行くわ」

電話を切ると玄関先へと向かう。

 

「あの草鞋がついた鍵あったでしょう?アレが見当たらないんやて」

いつも置き鍵をしている鍵のことを言っているらしい。朝から嫁は仕事で不在、自分は昼から不在となるため、次女が帰宅するまで自宅に残すのは長女のみとなる。といったわけで、自分が仕事に出る時は鍵をかけ、秘密の場所に鍵を隠してから出かける。

 

「最後に触ったのはあづ紀になるんじゃないの?」

帰宅し解錠するのは次女しかいないからだ。

 

「あれ、あの子どこやったんやろ。まぁ、いいわ。他にあるから。でもあの草鞋がついた奴じゃないと安心出来ん」

「なんで?」

「あの草鞋がお守りなんやて」

「あの汚い草鞋が?」

「うん、そう。あー、もう行かなあかん。遅刻する!」

 

と叫ぶように言うと坊主に同じくエグゾーストノートを巻き散らかしながら慌ただしく出ていった。

「ふぅ~ん、お守りねぇ」

お守りってのは持ち歩いてこそ意味があるもんじゃなかろうかと思いながら、いつも置き鍵がしてあるところを覗いたら、普通に置いてあるじゃない。

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わざわざ写真にまで撮って改めて眺めてみても、到底お守りには見えないが、自分にしても元の出どころを知らないのでまぁ、そういう事にしておこうかと思った。

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